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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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執拗に



「…え、何時いま」

目が覚めた時には隣に伊吹はおらず、瑞が慌てて階下に降りると、兄と伊吹がちょうど出掛けるところだった。姉と両親もいない。自分だけ寝坊したようで、キッチンの一人分の朝食にはラップが掛けられていた。

「おはよう瑞」
「おはようございます。すいません、寝坊しました…」

いいじゃないかと伊吹が笑う。

「久しぶりの実家なんだからゆっくりすればいいよ。よく寝てたから起こさなかったんだ」

髪が爆発してるぞと笑われる。情けない寝顔も見られてるし、なんなら腹出して寝てるとこも見られてるだろうし、なんかもうかっこつけていた自分が恥ずかしくなる。

「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」

二人を見送ると、家の中には瑞一人になる。久しぶりの実家。山鳩の鳴き声と、風の通り過ぎていく音。柔らかな日差しに木漏れ日が揺れ、キッチンの床に影を落としている。のんびりとした時間が流れている。学校からも、部活からも切り離された時間だ。温めた朝食を食べ終えて寝転がっていると、玄関から呼びかけらる。翔太だ。

「瑞、暇やろ?」
「めっちゃ暇。どっか行こう」

二人で外に繰り出す。といっても、子どもの頃のようにそのへんをぶらつきながら、とりとめのない話をするだけだ。それだけでも、昔に戻ったみたいで懐かしい。山際にある小さな神社の境内は、みんなで集まる定番の場所だった。夏祭りや子どもみこし、受験や家族との確執といった悩みも、ここで打ち明け合ったっけ。思い出の詰まった境内の座り、瑞は翔太といろいろな話をする。久しぶりだから、話すことは尽きない。

「あのひと、いい先輩やな」

昨晩、伊吹に会って翔太は好印象を抱いたようだ。そんな風に言われると瑞としては嬉しい。自慢の先輩だから。