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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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螺旋、再び 探偵奇談20

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あいつは、自分の人生のどこかで関わり合っているはずなのだ。瑞が忘れているだけ。あれほどの悪意、憎悪。そんな負の感情を向けられていたのならば、記憶に残っていてもよさそうなのだが、まったく記憶にないことが気持ち悪く不気味だった。

恨まれている。瑞は本能でそれを感じている。それなのに。

(いない…中学のにも、いないな)

アルバムの中にも、思い出の中にも、夕島の姿を確認することは出来ない。
思い返せば、小学校も中学校も、大きなトラブルや事件はなかったように思う。いじめなどもなかったはずだし、瑞が気づいていないにしても加担した覚えもない。中学に入ってからは弓道部での活動に邁進していたし、瑞にとってつらかったのは祖母が亡くなった記憶くらいだ。それとも瑞の知らぬところで、彼の恨みを買うようなことがあったのだろうか。

(転校生…いや、そんなのいなかったはずだ)

夕島。
どこで縁を持ってしまったというのか。それも、よくない縁。

「瑞?どうした」
「あ、はい」

考え込んでいた瑞の顔を、伊吹が怪訝そうに覗き込んでいる。いけない、今日は楽しい日のはずなのだ。せっかく伊吹が遊びに来てくれているのに。笑顔を作ってアルバムを指す。

「懐かしいなあって。俺、小学校の時はクラスで一番背が低かったんです。ほら」
「ほんとだ、小さい。何食ってそこまで大きくなったんだ」
「カレーすね」
「まじか」

嫌な予感を振り払おうと、瑞は努めて明るく言った。その様子を見ていた母が、それにしても、と口を開いた。

「じいちゃんや紫暮から、しっかりした友達がいるから大丈夫って聞いていたけれど、今日伊吹くんにお会いしてそれがよくわかった。この子が一人でじいちゃんのところに行くって言いだしたとき、本当はとても心配したの。でも、たくさんの人に支えてもらっているのね。伊吹くん、ありがとう」

母がそんなことを言うので、瑞は何だか身の置き場がない。母がこんな風に、瑞を心配するそぶりや思いを吐露することって、殆どないのだ。気恥ずかしさと、母の愛情のようなものを感じ、ちょっとだけジンとしてしまう。