小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

小さな世界で些細な活動にハゲむ高校生たち

INDEX|8ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

「はぁっ⁉ あんた、掃除してないわけ⁉ やる気がないのなら今すぐ帰りなさい?」

 怖ッ。怖いけど、帰りなさいって言われたら帰りたくなくなる。

「だから五色がやってくれるって……」
「シャラップ! 働かない者はいらないわ! 代わりを連れて来なさい!」
「ええ……」

 こういうとき、代わりがいないことに困るのが一般的だろう。だが俺は、代わりはいるけど多分他の友達らとサーティツーで騒いでるから連絡したくないということに困る。

「マサ樹、あんた三智とラブラブよね? さっさと三智を連れてきなさい?」
「ラブラブじゃない! ただの幼馴染です!」
「でも男女よ? いつでもセックスできる環境だわ?」
「ばーっっっ!」
「キャッ!」

 勝手に腰が浮きあがって、ベンチから転がり落ちた。セックスという単語にこんなに過敏に反応してしまうなんて……。

「おいマサ樹、何抱きついてんだ! レコミとセックスしたいからって、何もこんなところで」

 ハッと我に返った俺は、視界が真っ黒になっていた。ついでに、顔面にまな板のような硬いものを感じていた。

「は、離れなさい、この変態!」「部長こそ。あ」

 引き戸のほうに、人影が。

「こらこら、こんなところで不純異性交遊は厳禁ですよ」

 コンッ

「いてっ」「痛いわね!」

 いつの間にか引き戸の前にいた杏子さんにほうきで頭を小突かれ、あっけなく不純異性交遊が終了。それだけで済んで良かった。

「お姉! なんでわたしも叩くのよ、わたしは被害者だわ!」
 眉が平坦な杏子さんに迫るレコミ。
「おー、ソーリー。思わず、淫乱娘のレコミがマサ樹君を艶《なま》めかしく誘惑したと思い込んでいました。ごめんごめん、相《あい》ごめん」

 優しくレコミの頭をナデナデする杏子さん。おそらく、泣くのの予防。

「何よそれぇ! そんな思い込みするなんて、お姉は変態なんだから!」
「ぐ、ぐぬぬっ! 気づかぬ間にワタシも淫乱娘になってしまったというのかっ」

 あからさまに頭を抱えて嘆く杏子さん。親指、人差し指、そして中指の三本だけで頭を抱えているのは、この待合室が中二病オーラに満たされてるから……だと思いたい。よく見ると両眉は、眉間側に僅かに下り坂。

「と、とりあえずみんな、今から草引きするから外に出なさい? マサ樹、あんた草引きはちゃんとやらなきゃ許さないからね?」

 強気の姿勢を崩さないレコミは、ほっぺたが赤い。ゆでダコみたいだ。

「部長、俺はセックス発言を止めたかっただけですからね。それ以上でもそれ以下でもない。三智とセックスなんて、天地がひっくり返ってもあり得ない!」
「マサ樹君、三智さんとセックスしていたのですかッ……あ、眩暈が」

 目を回した杏子さんはその場でパタリと倒れ、埃だらけの床に倒れ伏す。眉が元どおり、平坦になっている。

「キャアア! お姉! っていうか何で床掃除してないのよ!」
「え、床も掃除しないといけねえのか?」

 口を空けたまま手に雑巾を持って、意外そうに棒立ちしている五色。でも窓を掃除して床を掃除しないのは不自然。これならJRに就職するなんて惨事には至らないだろう。

「仕方ないわね! マサ樹、あんたが掃除しておきなさい! サボっちゃダメよ?」
「……はい」

 甲高い声はやっぱり響く。結局俺は掃除しなきゃならなくなった。せっかく五色が配慮してくれたのに、無意味にさせてしまった。