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小さな世界で些細な活動にハゲむ高校生たち

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 わざわざ屈み、俺の顔を下から覗き見る。自動的な上目遣いによって可愛さが倍増していることなんて、心底どうでもいい。巧みな表面処理なのだから。

「バカ言うな。俺は本当のことしか言ってない」
「このこのぉ~。マサ樹はあいっかわらず照れ屋なんだからぁ~」
「ガキ扱いやめろ」
「へー、マサ樹も大人になったんだねぇ。でもあたしから見たら子供だよ。うん」
「同い年だろ。何で納得したんだ」

 三智は、ふふっ、とイラつく笑いをこぼす。やっぱりこいつは俺より上にいたいんだ。今更だけど、悔しい。俺は男だってのに。

「三智ー、何やってんのー? 今日サーティツー寄ってかなーい?」
「あ、うん行く行くー。 じゃね、マサ樹!」
「今日も部活来ないのか?」
「ほう! マサ樹はそんなにあたしと部活したいんだ! でもね、なんかサーティツーのバニラチョコアイスのほうがあたしを熱烈に求めてるっぽいんだよね。アハハ。……ごめんね? 今日は無理でした、残念っ!」

 バシッと肩を叩かれる。普通に痛いんだが。

「三智早く~」「あ、待ってー」

 楽しそうに友達と駆けて行った。馬っぽい。
 ああやって友達と道草食うのが理想の学生生活なのかもしれない。でもあんなの、俺には一生できやしないだろう。今は十一月だからアイスなんて冷たすぎて食べようと思わないし、そもそも食べモノを誰かと食べるっていうのは、食べることに集中できないから味が分からなくなる。一生できやしない。
 という理由付けをするのが第二の理想なのだろうが、本当は単に、道草を食い合うような仲の友達がいないだけ……。
 ということで、部活に行く。多分、部員はいる。部員は全員、道草を食うタイプではなく道草を抜くタイプであり、道草を抜く行動は主に土曜日の昼に行われる。それ以外の日、つまり平日は、生きる意味を見つける日になっている。それは俺の大袈裟な表現に過ぎないが、おそらく他の部員も、暇を潰す日としか思ってないだろう。

(部員っていうか……集団だな)

 とぼとぼ歩いていたら、あっさりと選択55に到着。理想の学生生活について熟考《じゅっこう》しながら、俯いて歩いていたためだ。この選択55という部屋は向かいの新館に位置しているため、旧館にある教室からはそれなりに歩かなければならない。俺がここに到着したということは、俺がここまで移動したことを意味する。が、本当にこの足で移動した実感は無い。

(歩いてるときは俺って死んでるのかも。あれだ、微レ存ていうのか?)

 縁起でもないぜまったく。生きる目的を見つけ出すために、早く引き戸を開けよう。そして選択55の中に入って、おそらく換えられていない花瓶の水を俺が換えよう。そうすれば、俺が今日学校にいた意味は生まれる。