影惑い 探偵奇談19
気が急いて仕方がない。今日は部活でも集中を欠いた。だが仕方がない。自分を取り巻くこの不審な悪意の正体を、一刻も早く突き止めたかった。
部活を終えた瑞は自転車に飛び乗り図書館へ向かう。閉館五分前。まだ間に合うか。まだ肌寒い夜を走り抜け、図書館の駐輪場に自転車を停める。
(ええと、あそこだ)
もう利用者はいない。館内は静まり返っている。初老の女性司書が一人、カウンターを拭いている。もう帰り支度を始めているのだろう。瑞は急いで新聞閲覧コーナーにあるパソコンの前に腰掛ける。新聞記事をまとめて閲覧できるサービスがあったはずだ。
鉄道事故で亡くなったという高校生がいた…。それが、瑞の前に現れるあの男子生徒なのだろうか。だとしたら、なぜ…。
わずかに震える指先で、夕島の名前を検索し、瑞は愕然とした。その名前でヒットした事件事故の数が、画面にずらりと並ぶ。瑞の想像を超えたものが映し出された。
「なんだよ、これ…」
平成〇〇年、I県立△△高校二年生、夕島柊也さんが電車に飛び込み自殺か
平成〇年、A県の山間にて交通事故。運転していた夕島柊也さん含む一家五人が死亡
昭和〇〇年、H県のマンション火災にて6人死亡。死亡したのは当マンションに住む夕島柊也さん、〇〇△△さん…
昭和〇〇年、一家惨殺の惨劇………、まだ幼い柊也くんも犠牲に……
昭和〇年、台風による豪雨。川が氾濫。川沿いの村が水没。行方不明者多数。〇〇△△、××〇〇、夕島柊也…
大正〇〇年、未曽有ノ大震災、○○町ハ壊滅カ。近隣住民ニ多数ノ犠牲。………、夕島シュウヤ、……、……
瑞は言葉を失ったまま、それらの記事を見つめたまま固まる。
作品名:影惑い 探偵奇談19 作家名:ひなた眞白