影惑い 探偵奇談19
(同姓同名?ただの偶然なのか?それにしては、この数は異常だろ…)
夕島柊也なる人物が、あらゆる時代、あらゆる場所で悲劇の死を遂げている。ぞくぞくと寒気が体を這ってくる。次ページへ、をクリックすることは出来なかった。まだまだ、この名前の人物の死亡記事が出てくる。そんな気がして恐ろしかった。
(何だよこれ…)
瑞は震える手でマウスを操作し、ブラウザを閉じた。閉館時間になったからだろう、館内放送が入ると同時にパソコンが自動でシャットダウンする。
(帰らないと…)
ここにいては駄目だ。一人になってはいけないのだ。
ふと顔をあげると、暗くなったパソコンの画面が目に入る。そこに映る自分と、その背後に立つ、青年の姿――
「っ…!」
その表情は、暗い画面にははっきりとは映らない。だけど、瑞にはわかった。その手が、瑞の両肩にゆっくりと置かれるのが。そして屈みこむように顔が近づき、瑞の顔を覗き込もうとしている。三日月の様な口が、笑っている。
「うあっ…!」
反射的に立ち上がって振り返ると、そこには先ほどカウンターで見た司書がいてキョトンとした表情を浮かべていた。
「ぼく?ごめんね、もう閉館時間なの」
申し訳なさそうな司書の声に、瑞はドッと安堵が押し寄せてくるのを感じた。汗びっしょりだった。
「どうしたの?気分が悪い?」
「いえ、大丈夫です…すみません、もう出ますから」
作品名:影惑い 探偵奇談19 作家名:ひなた眞白