影惑い 探偵奇談19
「五月の連休に瑞を連れて京都に戻るんだが、きみも来るかい」
「え?」
「いろんな大学に出入りしてみるのもありだよ。京都なら俺が案内出来るし、うちに泊まればいい。勉強と部活の息抜きになるんじゃないかな。五月は、季節もいいから観光もおすすめ」
願ってもない誘いだった。
「でも、いいんですか?せっかくの連休なのに。それにご実家にもご迷惑じゃ」
「構わないよ。両親も、瑞が世話になってるきみに挨拶がしたいと正月に零していたし。きみがよければの話だけど」
チャイムが鳴り、廊下に散らばっていた生徒達が教室へと戻っていく。
「考えておいて」
そう言って紫暮は手を振り、隣の教室に入って行った。袋小路をぐるぐるしていた伊吹の道に、少しだけ光明がさす。考えておいてと言われたが、今はもう行ってみたいという気持ちしかない。
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作品名:影惑い 探偵奇談19 作家名:ひなた眞白