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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影惑い 探偵奇談19

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決して彼らの青春を卑下しているわけではない。紫暮だって高校生の頃は、その世界がすべてだった。大切な友人も、苦しかった経験も、就職を控えた現在も財産だ。

「言い方が悪かったか。高校卒業はゴールじゃない。長い人生のスタート地点だってことだよ。一時の感情に任せてスタート地点での将来設計を怠ると、道の途中で途方に暮れることになる。まあ、途方に暮れるのも必要だっていうヒトもいるだろうし、それが決してマイナスだと言い切れるかというとそうでもない。遠回りした道でしか見つけられないものもあるからな。やりたいことを探すために大学に行くっていうヒトだっている」

離れるのが嫌だから同じ大学に行く、という選択はありかもしれないが、自分の将来を狭めることにもなるという危惧もはらんでいる。自分の意思がないからだ。

「俺は、後悔は少ない方がいいとは思う」

後悔のない人生などないけれど、あのとき、ああすればよかったと嘆く回数は、少ないほどいい。

「…どうして教育学部に行ったの」

瑞は相変わらず突っ立ったままだ。しかし紫暮に教えを乞うということはそれなりに真剣で、ある程度覚悟を持って話をしているのだと伺える。なにせ瑞が自分から兄と対話しようということなど、本当に稀なのだ。だから紫暮も真摯に答える。

「俺はずっと弓道を続けたかったのが大きい。もちろん一般企業に就職しても続けられる道はあるけど。でも部活の顧問なら弓に触れていられる時間はたくさん持てる」
「それで、教師?」
「うん」
「そんな理由でいいの?なんか、金八先生に感化されたとか、腐りきった教育現場を変えてやりたいとか。そういう思いがあったんじゃないの?」

何となく落胆したような弟の表情と、腐りきった教育現場というワードに、紫暮は吹き出した。どこで仕入れるんだ、そんな言葉。別に教育に賭ける熱い思いがあるわけじゃない。子どもの頃から夢だったわけでもない。弓を続けるため。それが第一。がっかりさせたかもしれない。

「でも、実習に行って随分気持ちは変わってきたけど。人と接する仕事とか教える仕事っているのは面白いもんだなってようやく思い始めてるよ」
「…じゃあ俺が、ずっと一緒にいたいからっていう理由で、先輩と一緒の大学に行くのもありじゃん。そこで何か将来したいことが見つかるかもしれない」
「いや、だからなんでそんな思いつめるんだ?ちょっとそこはわかんないな」

作品名:影惑い 探偵奇談19 作家名:ひなた眞白