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夢先継承

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 デジャブとドップラー効果、一見何の関係もない現象が、麗美の中で紐ついてしまうことで意識することなく身体が反応してしまい、恐怖を煽ったりするのではないだろうか。
 麗美は、友達との旅行で、そのことを意識させられたような気がした。
 箱の中にある箱を見つけた時、意識した無限という発想。その発想も以前どこかで感じたことがあったように思ったのも、先に身体の反応があって、意識を呼び起こそうとしているのかも知れない。
 音に対しての恐怖のようなれっきとした反応があるわけではないので、デジャブの部分だけが頭に残る。だから、デジャブというよく分からない意識を不思議に感じるのだろうが、そこに身体の反応が働いていると考えれば、かなり強引であるが、意識として自分を納得させることができるような気がした。
 麗美は翌日、目覚めは悪くはなかった。最近はあまり目覚めがよくなく、目が覚めているはずなのに、身体が動かないような気がしていた。
 確かに目が覚めるまでに時間が掛かることもあるが、目が覚めてしまうと、スッキリしているのが、麗美の目覚めだ。最近は、目が覚めてもまだ自分がどこにいるのか分からないような感覚があり、そのたびに、
――また同じ感覚に襲われている――
 と感じるのだった。
 そんな時、麗美は、
――同じ日を繰り返しているのではないか?
 と感じることがあった。
 前の日の目覚めを覚えているわけでもないのに、どうしてそう感じるのか、根拠もない発想に自分でも不思議だった。
 特に最近の目覚めでは、
――目覚めの時にいつも何かを感じているような気がしているんだけど、思い出したことが本当に昨日のことだったのか分からない――
 と感じていた。
 つまり、一日一日を刻む感覚がないため、目覚めという視点で見た時に、思い出すことが本当に直近である昨日のことだったのかどうか、自分でも自信がないのだ。
――自分で自分を信じることができない――
 という感覚に襲われた時、自分の考えが堂々巡りを繰り返しているように思えてならなかった。
――さっきの箱の中から箱が出てきたのを見た時、この感覚を思い出したんじゃないかしら?
 と感じた。
 箱の中に箱を見た時、感じた最初の感覚は、「無限」という発想だった。
 自分の前後、あるいは左右に鏡を置いた時に、映し出される自分を想像したのは、この無限という発想からではなかっただろうか。
 どうして最近、無限を感じる目覚めを毎日感じているのかということを考えた時、すぐに思いつくはずの発想がなかなか出てこなかった。
――目覚めの悪さの原因は、この発想が出てこなかったことが原因になっているのかも知れないわ――
 と感じた。
 いつも余計なことを考えているのだと思っていたが、この時ばかりは、もっと余計なことを考えてもいいと思ったのも事実だった。
 その日、二人は疲れたのか、結構早めに眠りに就いた。友達の方が結構眠かったようで、麗美はそれに合わせる形で床に入り、眠りに就いた。
――まだ、十一時にもなっていないけど、こんなに早く寝ちゃうなんて、最近ではなかったことだわ――
 と思っていた。
 だが、実際に床に入り電気を消すと、すぐに睡魔は襲ってくるというもので、心地よさを感じる中で、睡眠に入ることができた。
 普段は眠りに入る感覚など分かるはずもなかった。
――分かるはずなどない――
 と思っているからで、それも当然のことだと思っていた。
 しかし、その日は眠りに就くのが自分でも分かるようだった。普段感じることのできない心地よさをその時感じていた。
――まるで身体がとろけてしまいそうだわ――
 と感じた。
 よほど疲れている時は、心地よさを感じることもあった。
――眠りに吸い込まれる――
 という感覚なのだが、その日も似たような感覚だった。
 だが、疲れている時は、あっという間に眠りに入り込んでしまって、心地よさを味わうことはできなかった。それをもったいないと思うことはなかったが、この日の心地よさには、
――どうして普段、もったいないと思わなかったのかしら?
 と感じるほどだった。
 疲れている時は、あっという間に眠ってしまうのだが、それは眠りに就くよりも先に意識が亡くなっている感覚だった。
――前に自分の鼾で目が覚めてしまったことがあったっけ――
 と思ったが、あれは一瞬にして睡眠の世界から引き戻されたのだから、不快な思いがあってもいいのではと思ったが、実際に不快にはならなかった。
 驚きの方が強かったように思う。その驚きというのは、自分が気持ちよく眠っていたのを自分の鼾で目を覚ますという一種滑稽な感覚に、笑いも出ない自分を感じていたからだった。
 鼾というよりも、歯ぎしりに近いものだった。
「好きな人には絶対に見せられないものだわ」
 と感じていたが、その時の麗美はまるで他人事のように鼻で笑っていた。
 旅館に泊まったその日は、そのまま睡魔に身を任せ、完全に睡眠の世界へと誘われていた。
 どうして誘われたのを感じたかというと、睡眠の中にその答えはあった。
 その日、麗美は夢を見た。いつもはそれが夢であるということを悟るのは、目が覚めてからでしかありえないと思っていた。
 思っていたから。実際にも目が覚めないとそれが夢であるということを分かっていなかった。
 その時は、夢を見ていながら、それが夢であるということを理解していた。
――私は夢を見ているんだわ――
 と感じたのだ。
 そう感じる時というのは、夢の中ではありえないと思っていた。夢を見ていて、それを夢だと感じてしまうと、夢の世界から抜けられないというオカルトのような都市伝説を信じていた。
 だが、その時に夢を見ていると感じたのは、
――前にも同じような感覚に陥ったことがある――
 と感じたからだ。
 その夢が現実味を逸脱しているという意識が最初に来ていたら、それを夢だと思うことはなかっただろう。いや、思っていたかも知れないが、目が覚めてから、
――今のは夢だったんだ――
 という感覚になることはない。
 むしろ、現実を逸脱しているということよりも、幻想的な雰囲気を感じたという意識が強かったことで、
――これは夢なんだ――
 という意識を目が覚めてからも持ち続けられたのかも知れない。
 麗美は、さらにそれが夢であると感じたのは、その日、眠りに就く前に見たものの印象が強いことでそんな夢を見てしまったということに気付いたからだろう。
――どうして今日はこんなに冴えているんだろう?
 と感じたが、やはり普段と違う環境だということが、麗美の中に眠っていた感性を呼び起こしたのかも知れない。
 眠りに就く前に見たもので印象に残っているというのが何かというのは、すぐに思いついた。
――箱の中の箱――
 麗美はお土産コーナーで見た印象的な箱に心を奪われたままだった。
 以前にもどこかで見たことがあったようなと感じた思いを、そのまま夢の中に引きづっていったのだろうか。麗美は箱を最初に持った時の、あの重みを思い出していた。
 箱を開けた時、中に箱が入っているのはなんとなく想像がついたが、それだけではなかった。
――何か、虫のようなものが出てきたらどうしよう――
作品名:夢先継承 作家名:森本晃次