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ジャスティスへのレクイエム(第3部)

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 そんな中で王国や帝国などの絶対君主の国が疑問視されるようになってきたのも、さらなる時代の変革を予感させていたのかも知れない。

                 さまざまな世界情勢

 アクアフリーズ国が前回チャーリア国に先制攻撃を加えた時期とほぼ同時期、他の地域でも戦争が勃発していた。その戦争は独立戦争だったのだが、その国も他国から独立を炊きたてられる形でなし崩し的に戦争に突入していた。
 もちろん、戦争のシュミレーションは入念に行われてはいたが、いかんせん、自分たちが乗り気だった戦争ではないので、どうしても予期せぬ出来事まで予測することは不可能だった。
 戦争はある程度一方的なものだった。攻め込まれた方は、ほとんど戦争の準備もしていなかったので、防衛線は簡単に突破され、相手に国内への侵入を許してしまい、国内は混乱した。
「いったいどういうことなんだ?」
 と、政府首脳は軍部に説明を求める。
「軍部が国境付近で監視していた時は、戦争準備が進んでいるようにはとても見えなかったんですよ。外交的にはどうだったんですか?」
 と政府首脳に聞き直すと、
「こっちもそうなんだ。独立への機運が燻っているのは分かっていたが、今にも戦闘行為を起こすほどの感情は国民にも政府にも感じられなかった。だから安心していたのだが、まさかこんなことになるなんて」
 と、完全に攻め込まれた方にとっては寝耳に水の状態だった。
 攻め込んできた方も、雪崩打っては来たのだが、別に虐殺や略奪をおこなうことはなかった。あくまでも国際法に乗っ取った戦争のやり方は、正攻法であり、他国が批判することもなく、ほとんどの国は中立を宣言していた。
 宣戦布告の内容としてが、あくまでも独立を目指したいというだけのもので、それ以外の利害を求めてはいない。ただ、あまりにも突然の侵攻だっただけに、攻め込まれた方とすれば、WPCに提訴して、相手の攻勢が違法であるということを訴えるしかなかった。
 だが、世界の目は冷静で、独立を目指す国に対しても、防戦一方の宗主国に対しても援助を送る体制ではなかった。当然、先制攻撃に対して批判する国もなく、ほとんどの国はこの戦争を、
「対岸の火事」
 としてしか見ていなかった。
 戦争は時間が経つにつれて、次第にこう着状態に向かった。攻撃された国も次第に体制を取り戻していって、攻勢にも出ることができるようになっていた。
 ただ、すでに制空権も制海権も相手に握られてしまっているので、援助物資が入ってくることはなく、次第に攻城戦の様相を呈してきた。
 攻め込む方も、相手の懐奥深くに攻め込めば攻め込むほど、抵抗が激しくなってくることを初めて知った。それだけ戦争に関してはずぶの素人だったのだ。
 彼らを掻き立てた国からは秘密裏に軍事顧問団が送り込まれていたが、彼らの指示で何とか戦闘を続けられたが、自分たちだけでは、撤退も辞さないくらいの状態になりつつあったのだ。
「大丈夫なんですか?」
 独立を目指す国の軍部は、軍事顧問団に不安を漏らした。
「大丈夫ですよ。皆さんは独立が目的で、相手国を殲滅するのを目的にしていませんよね? つまりは相手に一撃を加えて、頃合いを見て、相手にこちらの都合のいい時期に講和を申し込んで、有利に交渉を進めて、いい条件で独立を目指すようにすればいいんです。戦争というのは一進一退なんて当たり前のことなんですよ。今は戦況を見つめることが大切だと思います」
 という軍事顧問団の話を信じるしかなかった。
 実際に戦争はこう着状態に突入してから、一進一退を繰り返していた。
「そろそろですかね?」
 という軍事顧問団の言葉から、いよいよ講和条約を申し出る時期が来たのだと、考えていた。
 講和条約はWPCを通じて行われた。元々相手国がWPCにも提訴していたので、WPCを通すのは当然だと思えた。しかも、
「講和条約を結ぶなら、第三国か国際機関を利用するのが王道ですよ」
 と言われたからだ。
 WPCを通じての交渉で、休戦協定が結ばれた。そのおかげで独立は認められ、宗主国からの干渉を受けることなく、諸外国との貿易や条約を結ぶことが可能になった。
 実はこの国には地下資源が豊富に採掘ができ、宗主国が手放したくなかった理由はそこにあった。
 独立を掻き立てた国の最大の目的は、彼らを独立させ、自分たちがその地下資源の利益をなるべく独占できればいいと思ったからだ。
 実際に思惑通り、地下資源の貿易権利の七十パーセントくらいを彼らが受け取ることができた。七十パーセントというとかなりのもので、独占したと言ってもいいだろう。
 軍事顧問団は引き上げていったが、次第に彼らにとって予期せぬ伏線が敷かれていたことにその頃になって気付かされた。
 掻き立てた国は、攻め込んだ国と反対の国境に面していた。したがって、独立を目指す国が攻め込んだことでできてしまった難民がドッと自国に雪崩れ込んできたのだ。
 その数は想像以上であった。それでも、
「戦争が終われば、次第に帰国していくに違いない」
 と思われたが、実際にはそうもいかなかった。
 元々の宗主国内部はかなりの廃墟となってしまっていて、戻るに戻れない状態だった。
 しかも、母国が難民となってしまった自国民の帰国を許さなかった。理由はもちろん荒廃してしまった国土が復興しなければ戻れないというのが建前だが、戻ってくることで疲弊した経済が耐えることができないと考えたのだ。
「このままでは我が国が立ち行かなくなります」
 と、WPCに提訴し、その理屈が認められて、
「この先、五年間は理由のないものの帰国は認めない」
 と認定された。
 実際に難民となってしまった人たちも自国への帰国を望んではいなかった。逃れた国の体制を見て、今まで自分たちが搾取されていたことに気付いたからだ。
 そう、いまだに宗主国、属国という主従関係を結んでいる時代遅れの国だから、封建的な考え方が残っていても不思議ではない。そのため彼らは母国への帰国を望まず、亡命国での永住を求めたのだ。
 困ったのは、難民を受け入れてしまった独立を掻き立てた国だった。
「まさかこんなことになるとは」
 とビックリしていたが、これも仕方のないことだった。
 逃げ込んできた難民のほとんどは、元々からの母国民ではなかった。奴隷制度の残っていた時期に、未開の国から連れてきた奴隷となる民族の子孫たちである。母国にはたくさんその名残が残っていて、しかも、あの地域は昔から地理的に戦争の絶えない地域でもあった。したがって、多民族国家がいくつも形成されて、それが独立や分裂を繰り返すことで今の体制になったのだが、いまだに国境線は流動的で、体制も宗教も多国籍だ。難民も民族がバラバラで、統一性のないものだった。
 言葉すら通じない連中もいる。
「こんな民族の集合国家だったなんて」
 と、驚きは尋常ではなかった。
 当然難民の間での統一性はない。絶えず小競り合いが続いていて、
「よくあの国はこんな民族を纏めてきたよな」
 と思わせた。
 そういう意味で、いくら地下資源を得るためとはいえ、戦争をたきつけてしまったことをいまさらながらに後悔してしまっていた。