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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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欠けた満月の日

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 擦り切れたジーンズに黒いジャケットを羽織った人物が近づいてくる。伸びた髪は首をおおい、あごにはまばらに髭が生えている。手の中で鍵を遊んでいる。
 懐かしい、胸を締めつけるタバコの香り――

「……望?」

 それは紛れもなく将斗だった。四年の月日を経て、肌の色はくすみ、瞳の輝きはなかった。けれどいつも将斗が吸っていたタバコの甘いかおりがたちこめて、望は立ち尽くしてしまう。

「……先生」

 パーキングの看板が明滅する。目の前に将斗が立って自分を見ている――その現実から取り残されていく心地がした。



作品名:欠けた満月の日 作家名:わたなべめぐみ