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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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忘却の箱

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ブランコ


 いつのことだったろうか。年長組の頃? 
 それとも小学一年生のとき?
 田舎の親戚の家に泊りで遊びに行っていた夏。いとこ二人と少し離れたところにある公園へ行った。バケツにおもちゃを詰め込んで、ちょっとしたお出かけみたいに。
 はじめは砂場遊びとか、鬼ごっこみたいなことをして、それに飽きたいとこがブランコに走って行った。私は足が遅かったし、力も弱かったから、いとこ二人がブランコを独占してしまって……
 交代するって言ったのに、自分達だけで楽しんで、全然代ってくれなかった。
 腹を立てた私は、おもちゃの入っているバケツの中身を放り出し、隅っこにある水道で水を汲んだ。
 どうしてって?
 そう、持って来たおもちゃの中に、水鉄砲があったから。
 私は、水鉄砲で思いっきり、いとこたちに水をかけてやった。
 なぜか彼らは大喜びになって、いつの間にか私も怒っていたことも忘れて水をかけまくった。
 そのうちに、やられるだけでは面白くないと思ったのか、いとこの一人がブランコから降りて交代してくれた。
 乗った途端に水をかけられ、一所懸命に漕ぎ出す。前に出ると水をかけられる、逃れようとしてもっと強く漕ぐ。その繰り返しが楽しくてたまらなくなる。
 ブランコの取り合いじゃなくて、水鉄砲の取り合いになり、3人とも馬鹿みたいに笑いながら水をかけ合った。しまいには水道のホースから直接かけて。
 後ろに行けば、前に出る。前に出たら水をかけられる。だから必死で漕ぐ。前に出る時は覚悟と期待、後ろに行くときは、ちょっと残念な気分。この落差が面白かったのかどうか。
 こんな馬鹿騒ぎをしていたものだから、どこかの大人の人に叱られて、結局三人ともおもちゃを片づけて公園から退散した。
 それでも私たちは道々大笑いしながら、親戚の家に戻った。全身ずぶ濡れで、服を着たまま泳いだのかと思われるほどの子供三人が歩いている姿は、きっと大人たちには奇妙に映ったに違いない。
 当然、親戚のおばさんには呆れられ、いとこ二人はこっ酷く叱られていた。
 思い出すだけで馬鹿々々しくて笑ってしまうようなことだけど、どうしてあれが面白かったのか、大人になってしまった私にはよく分からない。

作品名:忘却の箱 作家名:泉絵師 遙夏