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短編集53(過去作品)

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 恐怖の予想が的中する。それが分かった瞬間が一番恐ろしいということを思い知らされた夢。それから見つめられる恐怖、そして見つめている人物は自分しかいないという意識、そして、それらはすべて一番恐ろしい夢であることが潜在意識の中にあるのだった。
――やはり夢なのか――
 今見ているのが夢だとは思えない。これほどハッキリとした意識があるからだ。では、三年前が夢だったのか?
 三年間自分の中で暖めていた気持ちなのかも知れない。前回の夢は正夢で、正夢を覚えていること自体が、稀ではないだろうか。
――きっと皆正夢を見ているんだ――
 あまりにも夢とはかけ離れている感覚なので、まさか夢だとは思っていない。
「以前にどこかで見たような」
 いわゆるデジャブーと呼ばれるものを誰もが感じたことがあるだろう。だが、それを以前に見た夢だと思う人は少ない。
――夢とは潜在意識が見せるもの――
 つまり自分の中に何か記憶や意識がなければ、突飛な夢を見ることはない。デジャブーを感じたとすれば、それは前世の因縁だと思うかも知れない。
 正治の記憶力が悪くなったという意識は以前に見た夢の後からのことで、どこかに記憶を封印してしまおうという意識が隠れているからだ。
 その意識すらも封印しようというのであれば、却って記憶力の低下を意識することもないだろう。
 誰もが見る正夢、それは封印を意識させないために封印する意識の成せる業。それに気がついている人がどれだけいるだろう。
――匂いと、自信――
 正治にとって封印を解く一つのキーワードになることだろう。

                (  完  )

作品名:短編集53(過去作品) 作家名:森本晃次