すきま 探偵奇談18
「帰れる…」
ホッとして立ち上がる。
「腹減ったあー」
夕島もまた、ホッとしたようにそう声を漏らす。ホッとしたように。ホッとしたように?
(あれ…?何だろう、また何か忘れているような気がする…)
さっき、なにか怖いことがあったような気がするのだけど。しかし瑞に考える暇を与えないように、電車が滑り込んできた。下りの二両編成の電車。ようやく町に戻れるのだ。
「瑞、もうぜってー居眠りすんなよ!」
「ごめんて。もう絶対寝ない。町に戻ったらなんか奢るってば」
開いた扉に、笑いながら夕島が乗り込む。瑞も続こうとしたそのとき。
ピリリッ
「!」
瑞のスマホが再びあの音を奏でたのだ。メール。
「瑞?」
スマホを開く。今度は、伊吹からのラインだった。
『ぜったいのっちゃだめ』
瑞は後ずさる。
作品名:すきま 探偵奇談18 作家名:ひなた眞白