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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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すきま 探偵奇談18

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知らない、友だち――

「瑞、大丈夫か?」

冷たい汗が背中を伝う。眩暈がする。何だろう。いま何か大事なことを考えていたはずなのに、忘れてしまっている。霧散していく。

「…なあ瑞」

夕島の声がすぐ近くから聞こえる。瑞は目を閉じる。

「帰れるかなあ、俺達」
「…帰れるに、決まってる」
「瑞、本当にそう思うのか?」

夕島の声は、なぜだろう楽しそうだ。ウキウキと浮かれているような声色だった。

「ずーっと電車が来なくてさあ」

耳を塞いでも、夕島の声が鼓膜を震わせる。

「ずーっと夕焼けのままでさあ」

首筋を走る、得体の知れない怖気。

「だーれも助けに来なかったら、どうする?」

なぜそんな、楽しそうに?夕島は、笑いをこらえているかのように息を漏らす。
瑞の本能が告げている。

この声を聞いてはいけない…!


ポーン


「…!」

持って行かれそうだった意識を呼び戻す音が、ホームに響いた。
ホームに設置してあるスピーカーからだ。


『間もなく電車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください。〇△駅で起きた人身事故の影響で、ダイヤが大幅に乱れ、御迷惑をおかけしました。間もなく電車が参ります…』


無機質なその音は、天の救いのように思えた。

作品名:すきま 探偵奇談18 作家名:ひなた眞白