すきま 探偵奇談18
いつもの駅。いつもの街並み。夕焼けの中、雑踏を歩く人々。
「…帰ってきた…」
学校へ向かう。きっとまだ伊吹がいるはずだ。あの人は試合が終わった後も、一人稽古に励んでいるから。
歩きながら、瑞は兄に電話を掛けてみた。
『なんだ瑞、珍しい』
「…さっき、俺にメールした?」
『してないぞ』
なんだって?
通話を切ってメール画面を開く。
兄から届いたはずの、あの不可解なメールは消えていた。
(何だったんだよ…)
弓道場に着くと、やはり伊吹は一人弓を引いていた。瑞の姿を認めると、いつものように笑って迎えてくれる。
「おかえり。おまえ居眠りして降りる駅通り過ぎちゃったんだぞ」
「すみません…あの、先輩さっき俺にラインしました?」
「え?してないけど」
「……」
ラインの画面を開くと、やはり先ほどのメッセージが消えていた。瑞は、狐につままれたような気分で伊吹を見た。
「どうかしたのか?」
「いえ、いいんです。それで…そうだ、夕島戻ってますか?」
あの友だちは。
あいつは。
ちゃんと帰れたのだろうか。
「――夕島?誰だ、それ」
お ま え は も う か え れ な い
作品名:すきま 探偵奇談18 作家名:ひなた眞白