すきま 探偵奇談18
全身が総毛だって、瑞はその場に崩れ落ちそうになった。ぎゅっと目を閉じる。
間もなく電車は走り出した。得体の知れない二人を乗せて。
ホームには、瑞が一人で取り残された。足元が震えて、スマホを握る手が汗ばんでくる。
(帰れない…)
絶望的な気分になってスマホを見ると、電波が復旧していた。同時に静まり返っていたホームに、再び放送が流れる。
『間もなく電車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください。〇△駅で起きた人身事故の影響で、ダイヤが大幅に乱れ、御迷惑をおかけしました。間もなく電車が参ります…』
滑り込んできた電車には、人身事故の影響で足止めを喰らっていたらしき人たちが大勢乗っていた。それはまぎれもなく瑞と同じ人間で、扉が開いたその瞬間に人々のざわめきが耳に入り、瑞は帰ってこられたのだとようやく思えた。
先ほどの電車がどこへ向かったのかは、わからない。あれに乗っていたら、自分はどうなっていたのだろう。
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作品名:すきま 探偵奇談18 作家名:ひなた眞白