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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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九時前に、家の前に車が停まった。若菜の母親がやってきて、丁寧に礼を言う。スーツ姿で髪をきれいにまとめている彼女は、目元が若菜によく似ていた。

「若菜ちゃん。困ったことがあったらいつでも来たらいいからね。おばあちゃんもいないし、おうちに一人じゃ心細いこともあるだろう」

玄関で祖父が言い聞かせるように彼女に言った。夜の中、一人母親を待つなんていう危険なことを、年頃の娘さんにさせられないと思っているのだ。

「はい、ありがとうございます」

若菜はぺこりと頭を下げた。町役場に勤めている母親も何度も頭を下げて礼を言う。

「すみません。お言葉に甘えます。わたしが中々早く帰ってあげられなくて、心配していたものですから助かります。一人で家にいるのが怖いなんて、子どもみたいなことを言うものですから…。瑞くんも、ありがとうね」
「いえ」

親子は肩を並べて帰って行った。

「麻生のおばあちゃん、大丈夫なの?」
「うん。肺炎だって言ってたなあ。でもじきに退院とも聞いているから大事ないだろう」

祖父は玄関の鍵をかけながら言った。

「若菜ちゃんも不安なのかもしれんなあ。あの子がまた一人でいるようなら気にかけてやってくれ、瑞」

まかせて、と答えた。間もなく若菜の抱えている不安の正体を瑞は知ることになるのだが、このときにはまだ想像すらできなかった。




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