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わかんないんですよね、と繰り返し、瑞はミルクティー色の髪をかきまぜた。今日は寝癖だらけのところを見ると、本当に混乱しているらしい。いつもの彼らしくない。

「瑞は今まで、誰か女の子を好きになったことってあるのか？」

彼と恋愛の話をしたことなど、雑談のついでにしかない。

「付き合ったりはあったけど、告白されてよくわかんないままそうなった、っていうのばっか。俺、自分からこの子のこと好きだなって、そんな風に思ったことってあんまないかも。俺、これからどうしたらいいんだろ…」

かわいいことを言うではないか。伊吹は微笑ましくなる。自分の気持ちにまだ気づけずにいるのだ。それでも真剣に悩んでいる彼を茶化すことなど出来るわけもなく、伊吹は少し考えてから答える。

「今すぐに結論を出さなくてもいいんじゃないかな。思いを知っちゃったからそばにいられないかって言ったらそうじゃないだろ？」
「そう…でしょうか」
「ちゃんとわかるときが来ると思うよ、自分がどうしたいのか。そのひとが自分にとって、どういう意味で大事なのか」

だって自分の心なのだから。安心していいよと言うように、伊吹は深刻にならず返した。瑞の表情が少しだけ和らぐのが分かった。

「だからそれまで待ってたらいい」

そっか、と小さく呟き、何度か頷く瑞。自分の中で、どうにか折り合いをつけられたらしい。ぱっと笑って伊吹に向き直った。

「大人だね先輩」
「先輩だからな」
「…ありがとうございます」

戸惑いながら揺れている後輩を、見守ってやりたいとそう思う。瑞がどんな答えを出しても。

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