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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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「いーなー瑞くんはお兄ちゃんいて」
「…それで準備は?」
「玄関以外の場所は封じたあるから絶対に外から悪いものは入ってこられないよ。若菜ちゃんも覚悟決まったみたい」

若菜は廊下の隅に屈み、先ほどよりも落ち着いた様子で玄関を見つめている。そろそろ、あの夜と同じ時刻になる。それは現れるだろうか。瑞、颯馬、紫暮の三人も、居間から玄関を見つめ、そのときを待つ。

ガタガタと窓が鳴るのは、外を冷たい風が吹くからだ。音が鳴るたび若菜はびくりと肩を震わせる。

「大丈夫か?」
「…ねえ、みぃちゃん」
「うん?」

瑞が隣に座り込むと、玄関を見つめたままで若菜が呟く。

「不思議なんだ。いまは、あの影のことあんまり怖くない。おばあちゃんの話と、それから颯馬くんの話を聞いたら、なんだかかわいそうに思えるの」

切り倒され、再び人間を喜ばせたいという願いを断ち切られてしまった、桜の木。

「…もし本当にヒトの命で再生出来るのだとしたら、喜んで命を差し出すヒトが、いつかの時代にはいたんじゃないかなあ。わたし、そう思うんだ」
「…そうかもしれないな」
「夢で見た桜は、本当に綺麗だった。あの桜の美しさを守りたいって願ったヒト、きっといたんだよ。そういうヒトの命と引き換えに、あの木は生きながらえて来たんだろうね」

それは憶測にすぎないのだけれど、瑞には事実に思える。あの美しさに心を奪われた人間が、過去にいたとして。そしてあの桜は人の命の力を糧に美しさを増していったのではないか。そしてその糧となったのが、若菜の一族だったのかもしれない…。