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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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家主というのは、それだけで家と家族を魔から守る力があるのだと颯馬は言う。先祖の力、土地神の力、氏神の力、そういったものに守られているから、と。

「ごめんね若菜、怖い思いをさせてごめんね…」

百合は何度も謝った。しかし、18かそこらの娘が夢の中で交わした約束のことなど、誰も責められはしない。若菜もそれをわかっているだろう。祖母を恨んでいる様子はなく、不安そうな百合の背を抱いている。

「桜の木が意思を持つ。お伽噺のようだな」

紫暮がそんなことを言い、瑞は少し面白くない。現実主義者の紫暮にとって、こういう話は眉唾なのかもしれないから。

「世の中には、人間の理解の範疇を越えたことだってあると思うけど」

尖った口調で瑞が言うのを聞き、颯馬がくすっと笑った。

「命のない道具でも、年を経たら意思を持って化けるでしょう?」

颯馬は丁寧に語る。

「ツクモガミってやつか」
「それそれ。下駄とか針とか。ちなみにネコだって化けるよ。でも今回は、精霊に近いものかもね」

精霊。颯馬が言うには、沓薙山の木々、土、葉、水滴、その一つひとつにも意思が宿っているらしい。それと同じだという。植物にもまた、意識というか意思のようなものが存在するのだと。

「木にも命と意思が宿る。特に桜のような木は」

どういうこと、と紫暮が興味を示している。

「桜っていうのは、美しい美しいと人間に称賛されてきた木でしょう?年十年、何百年も。大きな意思を持っていてもおかしくはないって思いません?人間を喜ばせ、愛されてきたのなら尚のコト。枯れ果てて死にゆくこと、無残に切り倒されることを許せなかったのかもしれない」

そうか、と紫暮がぽつんと零した。颯馬の話は、妙に納得できる。桜の気持ちになれば。

「孫は渡せないわ」

百合が毅然と顔を上げた。

「どうすれば、あの約束をなかったことに出来るかしら」
「他の誰にも出来ない。若菜ちゃんだけが解決出来るんだ」

瑞は答えた。