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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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命のことだね、と颯馬が言う。

「命だって…?」
「力を失った木は、ヒトの命をもらうことで生きながらえようとしたんだ。老いて殆ど死んだ木にとって、切られずに済む方法はただ一つ。もう一度見事に咲き誇り、人々を喜ばせることでしょ。最終手段だ」
「そう。あのおじいちゃん、言ったわ。花を咲かす力をくれと。代々この桜を愛でた一族のモノの命ならば、再び力を得ると。でも、わたしは恐ろしくてそんなことは承諾できなかった。わたしの命も、夫の命も、家族の誰の命も、渡すわけにはいかない。だから」

だから、と百合は震える瞳で若菜を見た。

「孫が出来たら…そうしましょうって、答えた気がする…」

それで若菜か…。瑞はようやく納得する。

「思い出した。孫がいいと言ったらそうしましょう、ってわたし答えたわ…まだ子どもも生まれていない頃で、それなら逃れられると、きっとそう思って」
「そんな…それって夢だったんでしょう?夢での約束が有効だって言うの?!」

若菜の言葉に、颯馬が答える。

「夢は、ヒトではない者やココではない何処かと繋がる場所でもあるんだ。現世では決して交わせない約束も、夢の中だから有効になったんだよ」

百合は茫然と視線を落としている

「あれが…あの言葉が本当に契約だったなんて…。夢だと思っていた。今日まで忘れていた…」
「その何十年前の約束が、なぜ今になって生きてくるんだ」

黙って聴いていた紫暮が疑問を口にした。

「若菜ちゃんが生まれた段階で命を奪いにくるのが筋じゃないのか?」
「たぶん、わたしが入院して家から出たからね…」

俺もそう思います、と颯馬が百合に同意した。

「約束を交わした百合サンがここにいるうちは手出し出来ないんだと思う。家の主というのは、ここにいるだけで結界の役目を果たすんだ。家を守り、血筋を守る。桜の木は、百合サンが不在になったときを狙っていたんだろうね」