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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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話して、と若菜が促す。記憶の断片を繋ぎ合わすように、目を閉じてぽつぽつと百合は語り始めた。

「わたしがこの家にお嫁に来た頃、まだ18かそこらの頃よ。山の畑の近くに、大きな桜の木があった。枯れた老木でね。花をつけるところは見たことがない」

それはきっと、瑞が夢でみたあの老木だ…。

「舅…おじいちゃんのお父さんがね、畑を切り開くのに邪魔だからと、切ってしまったの。もう花もつけないからって」

生きていくために、そうするのが当たり前だったのだ。老いた木を守るより、生活の糧を得る方がよほど重要だった。木を切ったことが罪だと、瑞にはどうしても思えない。

「わたしは…それが憐れだと、そうおじいちゃんに漏らしたことがある。結局桜は切られて、切り株も抜かれて、焼かれて…」

生きられなかったのか、と瑞はあの夢を思う。命を吐き出しているように見えた。あれは、あの桜の最期の瞬間だったのかもしれない。

「その桜の木の話と、若菜ちゃんを訪ねて来る何者かの繋がりに、心当たりはないですか?」

尋ねたのは颯馬だった。突然瑞が連れて来たこの男を、百合が内心どう思っているかはわからない。しかし今の颯馬はいつもの軽薄さを消して、百合の内面を見抜くような視線を投げかけている。只者ではない雰囲気を纏う颯馬の言葉に、百合は視線を彷徨わせたのち、額を抑えて答えた。

「…待って、夢をみたわ」

百合は恐慌をきたしたように、頭を抱えた。記憶が洪水のように押し寄せているのだ。

「そう、夢…!思い出した…!あれは、桜の木を切る前の晩のことだった」

それは、瑞が見たのと殆ど同じ内容だった。枯れた巨木が、光る花弁を吐き出す夢。年若い娘だった百合は、その夢の中で奇妙な老人に逢ったという。ぼろぼろの着物を纏った小柄な老人。

「…おまえの親族がこの木を切り倒そうとしているって。憐れむ思いがあるのなら、もう一度花開く力をくれと。確かにそう言われた」