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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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そっか、だからあんなふうに素直になれないんだ。郁はそう思う。後悔している紫暮と、それによって寂しい思いをしたであろう瑞。

「ばあちゃんだけが、同じものを同じ目線で見て、共感してくれたんだと思う」

瑞にとっての祖母の存在の大きさを改めて知る。同じ匂いを纏っていないと不安だという瑞の拠り所。見た目のタフさとは裏腹な繊細さに触れるたび、郁は心が揺さぶられるような気持ちになる。弱さを含めて、自分は彼を好きなのだ。

「ばあちゃんが死んで憔悴しきってる瑞を見て、初めて思えたんだ。あいつの見てる世界や感じてることを、俺もわかってやりたいって。その埋め合わせじゃないけど、兄貴らしいことでもしてやれないかなって思ってるんだけど、相変わらず嫌われてる」
「…嫌いってことはないと思います」

そう言ったのは、伊吹だった。

「だって嫌いなら無視して突っぱねたらいいだけだから。家族だから、大事なひとだから、あいつ揺れてるんだと思います」

嫌いなら、もう関わらなくていいだけの話。だけどそうならないのは、素直になれないのは、心のどこかで自分をわかってほしいと思っているからなのだ。嫌いな人間に、自分をわかってもらおうなんて思わない。

「そうかもしれないね」
「すみません、俺、知ったようなこと…」

伊吹が慌てて謝ると、紫暮はそんなことないよと言うように優しく笑った。

「祖父が言うんだ。弓道部の先輩や友だちがちゃんとしてくれてるから、瑞は心配ないよって」

ありがとう、と紫暮が続ける。

「友だちでいてやって下さい」

頷く。兄は兄なりに弟を思っているのだ。家族なんだなと郁は思う。瑞にもいつか、きっと紫暮を許せる日が来るはずだ。