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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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来訪



稽古を終えてからも、紫暮に教えを乞おうと熱心な部員達が居残りをしている。四月になれば新入生も入ってくる。実力者、経験者が入ればレギュラー争いは必至だ。もっとうまくなりたい、上達したい。郁にもその揺るぎない思いがある。

「遅くなるし今日はここまでにしよう」
「ありがとうございました!」

心地よい疲労感とともに部活を終える。着替えを済ませて友人らとともに外に出ると、冷たい空気が肌に突き刺さった。

「さむー」
「鍵返して帰るね」
「郁、今日バス?」
「うん」
「また明日ね」

職員室に鍵を返してから正門に向かう。瑞が立っているのが見えた。

「お疲れさま。帰んないの?あ、お兄さん待ってるんだね。いま職員室にいたよ」
「うん、そう」

心底一緒に帰りたくないという顔をしていた。苦手なのだというが、男兄弟というのはこういうものなのだろうか。

「えっと、じゃあ、また明日ね…」

なんとなくぎこちない空気になって、郁は慌てて彼の前を過ぎようとした。部活中や授業中は普通に接することが出来るのに。二人きりになると、どうしても意識してしまう。焦ったのが悪かったのかぬかるみに足をとられて滑り、ローファーが片方飛んでいった。郁は盛大な悲鳴をあげてよろめき、咄嗟にそばにいた瑞にしがみついてしまった。

「うわっ!大丈夫かよ…」
「ご、ごめんね!」

靴を拾って慌てて履く。恥ずかしい!挙動不審で怪しまれてしまう。甘い匂いがふわりと香って、ますます意識してしまう。いい匂い、大好き、今日も寝癖ついててかわいかった。心の声がだだもれだったら、瑞にドン引きされてしまう…。

「さっき少し降ったからぬかるんでるんだな」
「…そうだね」

乱れた髪を整える。もらったヘアピンは、毎日欠かさず前髪につけている。