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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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何か、普通ではない。もしかして変質者とか強盗とか、そういったものの類かもしれない。若菜は玄関から距離をとって、居間の入り口にある受話器を手にした。すぐに通報できるように。

どちらさまですか、と尋ねると「それはみかんです」と返ってきた。
いま誰もいないので帰って下さい、と声をかけると「明日は雨ですよ」と返ってきた。

(何言ってるの…?)

不気味だった。

言葉が通じないというか、こちらの言うことなど意に介さないというような一方的なその態度が。得体のしれぬ気持ちの悪さ。しばらく影はこちらの言葉を待つようにそこに佇んでいたが、やがてすうっと引き戸から離れたようだった。若菜は全身の力が抜けて、受話器を握りしめてへたり込む。全身に、嫌な汗をかいていた。



*****

「あたし、絶対、戸をあけちゃだめだって思って…」

当夜のことを思い出したのか、若菜は両腕で肩を抱いた。相当怖かったようだ。

「それは怖かったね。翌日も来たの?」

紫暮の問いかけに、来ました、と若菜は震える。

息を殺して居留守を使って玄関の様子を伺っていると、「今日は入れますね」「カレンダーは古いままです」「あなたの猫が鳴きましたか?」などとやはり意味不明なことを問いかけてくるのだという。気が狂いそうだったと若菜は言った。しばらく一方的に話をしたあと、スッといなくなるのだという。

「怖くて、明日も来るのかなって考えたら、もう一人でいられなくなって…」

それから約一週間、彼女は母親が帰るまで家には戻れないのだと語った。母親がいるときにはこないのだという。昼間も同様で、日が落ちて一人でいるときにやってくるのだと。