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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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何それと吹き出す。らしくない瑞の姿に、郁は笑ってしまう。拗ねているように口を尖らせていた。

「俺に構わず巻き藁ドウゾ」
「ありがとう」

巻き藁に向かい、指先の動き、足の向き、前に向かう気持ちのすべてに心を配る。早気は徐々に克服されているとはいえ、まだまだ予断を許さない。ここで満足してしまってはいけないと、郁はそう感じていた。とにかく丁寧に、絶対に慢心せず。

離れと同時にまっすぐ巻き藁に突き刺さった矢。ふっと身体の力を抜いた時、背後に人が立っている気配に気づいた。

「丁寧に引けているね」

紫暮だった。

「あ、ありがとうございます」

何だか妙に緊張してしまう。柔らかい表情。見た目は何となく似ているのかもという程度なのだが、その歩き方や仕草の丁寧さは瑞によく似ていた。やはり兄弟なのだなと改めて眺めてしまう。

「あの、わたし早気を克服してる最中なんです。何かアドバイスとか、いただけると…」

緊張しながら聞いてみる。何か一つでも、上手なひとから教えを乞いたい。紫暮は郁の真摯な思いに丁寧に答えを返す。

「動作も正確、綺麗に引けているし、会もちゃんと保ててる。そのままでいいと思うよ。ただ口割りが少し下がってくるから、そこを意識してみるといい」
「はい!ありがとうございます!」

穏やかに笑って、紫暮が隣の巻き藁の瑞に寄る。瑞は明らかに集中していない様子だ。

「おまえその気のない射は何だ」
「…さーせん」
「返事は元気にハイ」
「ハイ!」

面白い兄弟だなあと微笑ましくなる。いつも飄々としている瑞が振り回されているなんて珍しい光景だった。




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