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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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悠久に舞う 探偵奇談17

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夜に立つ影



「四月から教育実習生としてお世話になります、須丸紫暮です。弓道部の指導にも入るので、みなさんとは関わる機会も多いと思います。どうぞよろしく」
「須丸先生は挨拶に見えたんだが、今日はせっかくだし稽古を見ていただこうと思う」

顧問に紹介されたのは、瑞の兄。郁はまじまじと見入ってしまう。背の高い、穏やかな雰囲気の人だった。人当たりのよい雰囲気、柔らかな喋り方。

「副将の兄貴だってよ」
「そういやあいつ、三人キョウダイの末っ子って言ってたな」
「そんで瑞どこいったん?」
「なんか腹いてーんだとよ。さっき更衣室で倒れてたぜ」

瑞はというと、兄の訪問を知らされていなかったようで、大いに驚き、ついには具合が悪くなってしまったという状態らしい。

(お兄さんかあ…)

郁としてはちょっとどきどきしてしまう。好きなひとの兄というならなおさら興味が沸く。女子部員は彼に見惚れ、ぽややんとした顔で弓を引いている。聞けば弓の腕もかなりのものらしい。稽古を見てもらえるというのはチャンスだ。早気を克服するためのヒントをもらえるかもしれない。

巻き藁室に向かうと、そこに浮かない顔の瑞がいた。

「だ…大丈夫?」
「うん…」

そんなに兄がやってきたことが嫌なのかと尋ねたら、怖いんだもんと瑞が言う。

「優しそうだけど…」
「俺にだけおっかないの」