短編集47(過去作品)
結婚式場での控え室で鏡に写ったウエディングドレスを見ていた。その部屋には後ろにも鏡があって、永遠に自分の姿を映し続けているのが印象的である。
――永遠にこの気持ちを忘れないようにするためのものなのね――
と気持ちは晴れやかなのだが、永遠という言葉を口に出して言うと、悲しさが抑えられなくなって涙が溢れ出る。
彼との出会いの中で感じてきた「しき」……。
季節感を一緒に感じた「四季」、これからの彼に身を委ねることで感じる彼からの愛情とともに受ける「四季」、そしてやっと迎えた結婚「式」……。
だが、最後の「しき」は孝子にとって残酷なものだった。
年末に彼が救急車で運ばれて入院したことがあったが、疲れからの過労という診断だった。だが、孝子はまたしても夢を見た。今までに見た夢の中で一番不吉な夢で、それが現実であることを彼の母親から宣告された。
愕然とした孝子だったが、もう振り返るのは嫌だった。せっかく前を向いて歩き始めたのだから後戻りなどできやしない。
たとえ、彼の「死期」が、あと半年後に迫っていたとしても……。
( 完 )
作品名:短編集47(過去作品) 作家名:森本晃次