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時間差の文明

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 浩平は、あまり友達付き合いが得意な方ではない。男同士、女同士、男女の仲、それぞれ、どうしても深く考えてしまう。
「男同士が分かり合いやすくていいじゃないか」
 という話をよく聞くが、男の友情など、よく分からない、彼女ができれば、友情よりも愛情を選ぶやつが結構いるからだ。
「まあ、彼女ができたのなら仕方がないか」
 と、一人が抜けたことくらい、誰もそれほど気にしていないようだ。
 浩平も、そんな中にいたことがあるが、元々男友達の関係など、最初からあまり信じていなかったので、どうでもいいと思っていたが、他の連中までそうだというのには、少しビックリだった。
「だって、明日は我が身だよ。俺に彼女ができて、彼女を取った時、まわりから裏切り者呼ばわりされるのも嫌だからね」
 と、ビックリした時の気持ちをそのうちの一人に聞いてみた時に返ってきた返事がそれだった。
「なんだ、要するに自分が可愛いだけか」
 と、皮肉を込めて、相手が怒るのも仕方がないかと思いながら口にすると、
「まあ、そういうことだ」
 と、怒りもしない。
 男同士の関係なんて、しょせんそんなものだ。
 しかし、本を読んでもドラマを見ても、男の友情が一番強いように描かれている。
――すると、女同士であったり、男女の関係は、もっと薄っぺらいものなのか?
 と思うと、何となく人間関係なんて、考えるだけバカバカしいと思うようになっていった。
 千鶴が話し始めた。
「それでね。彼女が浩平さんを紹介してほしいっていうの。会ってみたいっていうことね」
「どういうことなの?」
「彼女のお姉さん、今度結婚することになったのよ。二人はとても仲のいい姉妹だったから、彼女としてはとても寂しいらしいのね。それで、私を思い出してくれたんだけど、私には、浩平がいるでしょう? だから、浩平に会っておきたいっていうのよ」
「じゃあ、僕は千鶴の妹に会うような感覚でいいということかい?」
 少し千鶴は考えてから、
「そうね。それが一番いいかも知れないわ。自然な感じがするものね」
 と千鶴は答えたが、浩平は少し違和感があった。
――自然というのは、どういうことなんだ? 元々妹でもないのに、妹として……。しかも、千鶴に対してかなり強引な感じを受けるけど、千鶴はそれを断っていない。断れない理由でもあるんじゃないか?
 と、余計なことを勘ぐってしまいそうだ。
 少し、返事に戸惑ていると、
「すぐにってわけではないし、浩平が嫌なら、それでこのお話は終わりにするから、そんなに深く考えないでいいのよ」
 と言ってくれた。
――ここまで言われると、引き受けないわけにはいかないのではないか?
 とも、思ったが、
「いや、やっぱりやめとくよ。僕が会う義理ではないような気がするんだ」
 浩平は、結論を出そうと考えた時、背筋に身震いを感じた。
 今までにこの身震いを感じたことが何度かあるが、身震いに逆らった時はロクなことがなかった。一番ひどい目に遭ったのが、交通事故の時だっただろう。
 予知能力とまでは言わないが、虫の知らせというものか、言葉的には、自分の能力によるものなのか、他力本願によるものなのかの違いに感じるが、どちらにしても、自分の本能によるものだという感覚が強いことで、身震いを感じた時は、逆らわないようにするのが一番だった。

                 千鶴のくせ

 千鶴は、喫茶「アルプス」で、超常現象の本を見ながら、本能と予知能力について考えていた。
 喫茶「アルプス」に今日来ることになったのは、偶然のようだが、それだけではないような気がする。何年も前に来ただけの店だったはずなのに、店に入って時間が経つにつれ、前の記憶がどんどん最近のように思えてくるのを感じた。
 しまいには、
――まるで昨日のことのようだわ――
 とも感じられた。
 ウエイトレスの女の子のことを見ていると、確かに友達の妹のように思えてならない。あまりジロジロ見てはいけないとは思うのだが、気になるのは仕方がない。見ないようにしているつもりでも自然と視線がいく。その割りに、目が合わないのが不思議だった。
 本に目を落としていると、彼女の視線を感じたことで、最初は本に集中できなかったが、すぐに感情は本に移っていた。それだけ気になるような内容の本だったのだが、本当はSFっぽい雑誌は、自分よりも浩平の方が好きな内容のものだった。
 超常現象や、SFの話は中学時代の浩平がいつもしていたような気がする。本屋に行っても、いつも超常現象の本を探していたような気がする。もっとも、中学時代にそんな話を聞かされても、頷いているだけで、分かったようなふりをしていただけだった。浩平は、本当に千鶴が分かっていると思ったのだろうか? 千鶴にはそれが謎だった。
 ただ、最近の浩平は超常現象の話はまったくしない。本当に興味がなくなったのか、千鶴の前でしても同じだと思ったのか、どちらにしても、浩平は千鶴が、今超常現象の話に興味を持っているなどと、想像もしていないことだろう。千鶴としても超常現象に興味を持ち始めたのは最近のことで、それまではまったく興味もなく、想像すらすることもなかったのだ。
 それがなぜ急に興味を持つようになったというのだろう?
 それは千鶴もきっかけがあったことは分かっているが、詳細に分かっているわけではない。それが夢の中の出来事だったからだ。
 その時の夢も、他の夢と類に漏れることはなく、目が覚めるにしたがって忘れてしまっていった。しかし、確かに超常現象を信じている自分の夢を見た。目が覚めて、ゾクゾクっと身震いしたことも、千鶴の考えに拍車を掛けたのだ。
 千鶴は浩平の顔が夢から覚めても残っていることが不思議だった。他のことは忘れているのにである。
――浩平の何かを夢に見たんだわ――
 しかも、その時の浩平の顔が中学時代だったことで、超常現象の話を得意げにしていたのを思い出したのだ。
 その瞬間、夢で超常現象を信じていた自分を思い出したのだ。超常現象を信じることがその後の自分に影響を与えるというような話だった。気落ち悪かったが、千鶴の性格では、こういう夢を見た時は、信じないと気が済まない。それは理屈ではなく。信念のようなものだった。
――因果な性格なのかしら?
 と思ったが、信じてみるのも悪くないと思ったのも事実だった。
 超常現象の雑誌の、その時の特集は、
「失われた古代文明」
 と題されたもので、昔から信じられているムーや、アトランティスなどの話が描かれていた。
 千鶴は、以前同じような話を読んだことがあったので、復習のつもりと、あれから新しい研究がなされているのかも知れないという思いとで、興味を持って見ることにした。
 内容としては、数年前に読んだ本と、さほど変わっていなかったが、最後の方のところに、
「今までに知られていない古代文明」
 という内容で、聞いたことのない文明の名前がいくつかあった。
 その中に、
「カリオス文明」
 というのがあった。
 それは、中東と欧州の中間くらいのところに位置していて、ちょうどローマや、ギリシャの北部に位置しているところにあった。
作品名:時間差の文明 作家名:森本晃次