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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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「おばあちゃん大丈夫?」

お年寄りを大事にしないやつは、自分が年をとったとき同じ仕打ちをされても文句は言えないと思う。弱い者を助けるのは当たり前のことなのに。力を持つ者なら尚のことだ。

「手伝います」
「どうぞ、おばあちゃん」

瑞の行動に思うところがあったのだろうか、先ほどまで黙っていた乗客たちが手を貸してくれる。幸い老女に怪我はなかったようで、にっこり笑って立ち上がった。

瑞は老女の荷物を拾うと手渡した。

「ぼく、ありがとうねえ」

ぼくって…俺もう16なんだけどなと苦笑する。

「助かりましたよ。いい子いい子。はいこれ、お礼にどうぞ」
「え?あ、ありがとう…」

布カバンから取り出したみかんを、老女から受け取る。ごきげんよう、と老女はバスから降りて行った。



駅前で降りた瑞は、どうしようかと思案する。ショッピングモールには開店時間を待つ客が並んでいる。コーヒーチェーン店もモーニングを求めるひとで込み合っているようだ。休みの日に人ごみの中をかいくぐるのは違うな。瑞はそう思って駅とは反対の道へ向かう。

(少し歩くか)

駅前から続く並木通りを歩く。静かな住宅街を目指すうちに、陽が高くなり、少しぽかぽかしてきた。新興住宅地の合間には、おしゃれなカフェや不可思議なアトリエなんかが並んでいて、こんなところにこんな店があるんだなと様々な発見に胸が躍る。こんなふうに目的もなく歩き回ることってないから、なんだか不思議な気分だった。すごく贅沢な時間だと思う。