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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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そんなことを考えながら吊革につかまってボーッとしていると、信号で停車したタイミングでお年寄りが両替に立った。運転席近くに立っていた男が通路を塞いでいる。老女は両替が出来ず困っている。「あのう」と声を掛けるのに男は知らんぷりだ。

「ねえちょっと」

瑞はさすがに一言いってやろうと一歩踏み出す。その間にバスは動き出し、振動でよろめいた男が老女にぶつかった。彼女の手から手提げバッグと小銭が落ちた。危ない、と手を差し出して咄嗟に老女を支えた。

「あっぶな…」

お年寄りというのは、些細なことで骨折だってするのだ。瑞はぶつかってきた男を睨む。会社員といった風貌で、それなりに年を食っている。社長さん、と呼ばれるのが似合いそうだが、お年寄りに対するこの振る舞いは何だ。怒りが沸いた。

「ちょっとおっさん危ないだろ」

瑞が食って掛かったので、男はぎょっとしたようだ。しかしすぐに舌打ちをして、聞こえないふりをする。

「横着すぎだよ、通路ふさいでさ」
「なんだよこのガキ…」
「ガキに説教されて恥ずかしくないんですか?」

なんでガキの俺にわかることが、いい年こいたオッサンにわかんないわけ?ひとにぶつかっっておいて知らんぷりはいけません、迷惑になることはやめましょうって、それ俺は保育園の年少さんで教わりましたけど。瑞はそんな思いをこめて、男性を睨んだ。明らかにひるんだ風に、そいつは後ずさる。

「ちゃんと拾って下さい、このひとの鞄と小銭。ぶつかったのアンタでしょうが」

男は周囲の視線を気にしてか、ばつがわるそうに俯いている。ちょうどそのときバスが次の停留所に着き、男は舌打ちを残して降りて行った。