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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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わらしべ



完全休養日の朝。早起きしなくてもいい日に限って、ちゃんといつもの朝に目が覚めてしまう現象って、名前があってもいいんじゃないかと瑞は思う。アラームもかけなくていい、寒い朝練に向かうために支度をしなくていい。温かい布団の中でいつまでも眠っていてもいい日に限って、しゃっきり目が覚めるこの因果。

「じいちゃーん…は、そうだ昨日からいないんだ」

がらんとした居間は、冷たい空気でいっぱいだ。祖父はといえば、将棋クラブの集まりで昨日から出かけている。冬場は畑仕事が少ない分、趣味に没頭するのだ。泊りがけで小旅行だと言っていた。こたつに入ってテレビをつける。早朝のテレビは小難しい話題ばかりでちっとも面白くない。

「…今日に限って猫もこないし」

いつもは朝食の時間になると、瑞の部屋の窓に集まってくる近所の図々しい飼い猫たちも、今日は遊びに来ない。薄情な猫たちだ。ひとりぼっちだ。トーストを焼いてコーヒーを淹れる。

「…よし!」

どこか行こう。このまま家にいても、もやもやするだけではないか。
もともと一人で出かけるのは嫌いなたちではないし、誰とも関わらない一日というのは、それはそれで新鮮な気がする。好きな店を覗いて、好きなもの食べて、自由に過ごそう!雪は降っていないし、交通機関に乱れもないようだ。駅前まで行って、何からしようかは、そこから考えればいい。

支度を整えてバス停に向かうと、ちょうど駅に向かうバスがやってきて、さっそく乗りこむ。窓から見えるのは雪の町だ。

(この町に来て、もうすぐ一年か…)

雪国の暮らしにも、ずいぶん慣れてきたと思う。雪かきもすっかり日々の日課だし、転ばないように歩く方法も身に付けたし、雪にもいろんな種類があることを知った。音を吸収する雪がしんしんと降る晩は、怖いぐらいの静寂に包まれることも。その心地よさが瑞は好きだった。音すら消える世界にいると、自分の身体の輪郭も夜の中に溶けてしまうように錯覚する。そんなことを考えながら眠ると、心がざわめく夜でもひどく優しい気持ちになれるから不思議だった。