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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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「なんだ兄ちゃん。今日はもう終わりだぞ」

中年がアコギをしまい始める。

「うん。今の、知ってる曲だったから。なんか、聴き入ってた」

へえ、と男は少しだけ目を丸くした。

「そりゃ嬉しいね。ありがとうな。あんたみたいな若い子が知ってるなんて意外だよ」
「俺の周りは結構知ってるよ」

瑞も、伊吹に教えてもらって好きになったのだ。

「俺の青春だったんだよなあ」

しみじみ言って、男は笑った。青春という言葉はきっといまの自分達の年頃に使われるのだろうけれど、一人で冬の街を彷徨い歩く自分はその言葉の対極にいるような寂しい気持ちになる。

「俺の先輩が、今日このバンドのライブ行ってるんです」

この俺を置いて。恨み節が募る。しつこいな、俺も結構。

「まじか。おまえチケット取れなかったのかよ」

シュンと頷くと、でもまあ俺の歌が聴けたからよしとしろよ、と中年は笑うのだった。

「そう気を落とすなよ」
「おっちゃんは行かないの?」
「この年になるとな、聴けなくなるってこともあるんだ。思い出がありすぎてな」

思い出。

「つらかったことを思い出すから?」
「つらかったことも嬉しかったことも思い出すからだ。二度と戻れない」