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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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瑞の軽蔑のまなざしを受けて、茶髪はブヒャヒャと大笑いした。女性に殴られて鼻血を吹き出して盛大に振られて高校生に説教されて笑っている。…変なヒト。

「イケメンくん、これあげるよ」
「なにこれ」

一枚のフライヤーを渡される。ギターの弾き語りの宣伝だった。手書きにざらざらした紙の感触。手作り感満載だ。

「この先の路上で、俺のコーコーのときの先輩が歌ってんだ。夢を諦められないとかって。よかったら聴きに行ってやってよ」

じゃあありがとねーと茶髪は去った。

(このチラシがエンディング?)

おかしなものだ、まだ物語は続いているらしい。瑞はこのフライヤーが次は自分に何をもたらすのか気になり、言われた通りの場所へ向かうことにする。噴水広場が近づくと、ギターの旋律が聴こえてきた。聞き覚えのある旋律に、瑞の足はそちらへと向かった。

(あ、この歌…)

この寒い中、薄着の中年男がアコギギターをかき鳴らしながら英語詞を高らかに歌い上げており、そばで数人の通行人が足を止めている。本家本元には足元にも及ばない演奏だけど、切ないメロディラインと、がなり声が、奇妙にマッチしていて面白いと思った。

伊吹のことを思い出した。
郁のことを思い出した。

伊吹がギターで弾いていたコード。郁が好きだと言った歌詞。

(…一緒に聴きたかったな)

唐突に寂しさが蘇ってくる。明日もまた会える。会えるのに。でも贅沢を言うなら。

気が付いたら演奏は終わって、観客は瑞一人になっていた。