巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16
心になかにいつも
伊吹はクラスメイト数人とライブまでの時間を潰しながら、瑞のことを考えていた。「俺も行きたかったのに」と最後まで愚痴っていた瑞のことを思うと、(伊吹には何ら罪はないのに)悪いことをしたなあという気持ちになる。寂しい思いをさせたかな、と。
(この頃は、離れてるほうが珍しいからな)
部活でもそれ以外でも、瑞と過ごす時間が多いから。今回一緒に出掛けられなくて、疎外感に拗ねてしまったのだ。そういうどうしようもなく幼稚なところがあの副将にはあって、その完璧でない部分が、伊吹にとってはものすごく親しみを覚える彼の一面なのだった。
(ちゃんと考えてるぞ、おまえのこと)
俺のことなんて忘れて楽しむんだ~ひどい~なんて言って拗ねてたけど、おまえってものすごく贅沢なやつ。
そんなことを考える伊吹だったが、まさかこのあと瑞に出会うとは夢にも思っていない。
.
作品名:巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16 作家名:ひなた眞白