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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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ぐずぐずと鼻を鳴らすものだから、瑞は困ってしまう。小さい子と普段関わることなんてないから、どう接していいものか。

「あ、みかん食べる?」

コートのポケットに、先ほどもらったみかんが入っていることを思い出す。少女はぱっと顔をあげ、食べたい!と元気に言った。

「はい。むける?」
「うん!」

細かく皮をむいて、少女は嬉しそうにみかんを頬張った。心細い少女が、少しでも元気になれたのならよかった。瑞はふと、自分が昔迷子になったときのことを思い出す。

「俺も昔、祭りで迷子になったなあ」
「ママたちとはぐれたの?」
「ううん、兄ちゃんと姉ちゃんとはぐれた」

小学校低学年くらいのときだと思う。暑い夏の祇園祭だ。年の離れた兄と姉が、友だちと出掛けるというのでついていこうとしたら、人が多いからおまえは連れていけない、と突っぱねられた。それに腹を立て、瑞は一人、兄と姉を追いかけたのだ。

「あんときゃ、まじでもう家に帰れないと思ったなあ」

夜の迫る宵山で賑わう京都の町を、一人でうろうろと彷徨った。兄や姉に会えるわけもなく、ひとでごった返す碁盤の目の町は、どちらが北でどちらが南であるかもわからなくさせた。家に帰る道も、バス停もわからず、もうパニックだった。

「勝手に出かけて怒られたデショ」

みかんを食べて元気になったのか、少女がそんな風に聴いてくる。彼女も同じことをして怒られているのかもしれない。共犯者めいた言い方に瑞は吹き出した。

「そらもう、めちゃくちゃ怒られたよ。兄ちゃんと姉ちゃんが家に戻ったら、母さんたちがあの子がいないって騒いでて、そっからもう家族総出で捜索」