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WHO ARE ROBOT?

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 異常性格に目を瞑っているはずだったのに、彼に対してあまりいいイメージがないのは、異常性格から派生するあまり自分が好きではない性格が見え隠れしているからではないだろうか。つまり、好きではない性格がハッキリしていないことで、嫌いにもなることができず、それが惹かれる原因の一つだと思うと、
――何を持って男性を好きになるというのだろう?
 という思いが頭をもたげるのだった。
 最初はそこに千尋の感情は含まれていないと思っていたのだった。
 ただ、真田という男性を、
――男性として好きだという意識はないけれど、友達としては大切な人だわ――
 と思っていた。
 そう思うことで、
――友達という感情が邪魔をして、好きな人だという意識になれないからではないのかしら?
 と感じた。
 普通なら逆ではないのだろうか。好きな相手であれば、友人として付き合うことはできないと思うことはあっても、友達という感覚を大切にしたいから、好きになってはいけないという発想を抱くことは稀だと思っていた。
 こんな話を他の人としたことはなかったが、実際には友達だと思っているので、その人を好きになってはいけないという気持ちになることも多いようである。そしてその思いを自分に納得させるために、その男性を好きになっている親友の女性がいると、その人への遠慮が自分の気持ちを押し殺さなければいけなくなり、彼を好きになってはいけないという理由を、
――友達だから――
 という言葉で片付けようとしたのだ。
 それは、自分の気持ちに対しての辻褄合わせにすぎない。その気持ちを美化してしまう気持ちが早苗にはあったのだ。
 だが、好きになった人を友達として見ることができないというのはどういうことだろう?
 二つ考えられる。
 一つは、好きになって付き合った相手と何かの理由で破局を迎えた時、その人と果たして別れた後も、友達として付き合っていけるかどうかということである。少なくとも千尋にはできないと思っていた。早苗はあまりそんなことまで考えたことがなかったので、どうなるのか、想像もつかなかった。
 もう一つは、好きになった人を、自分の親友と思っている人も好きになった場合であろう。
――昨日までの親友が、今日から恋のライバルになってしまう――
 という環境に置かれた時、どう考えるかということである。
 親友との関係を解消してでも、好きになった男性を手に入れようとするかどうか。もし、そこまで考えているのだとすれば、本人にどれほどの「覚悟」があるかが問題である。
 その人にとっては、貪欲にその男性を何としてでも手に入れるという気概を持って、それ以外のすべてをなくしてでも手に入れるという思いがなければ、難しいことになるだろう。少なくとも親友とは絶縁になってもしょうがないとまでは思わない限り、この恋が成就することはない。
 そこまでの覚悟があるかどうか分からない人は、自分がどうして恋焦がれているのかを分かっていないかも知れない。そんな時に一番気持ちの中に引っかかっているのは、嫉妬ではないだろうか。
 自分があきらめてしまうと、親友と好きになった男性の二人が付き合っている姿を嫌でも想像させられてしまう。想像というのは、その人にとっていいことばかり頭に浮かぶのであればいいが、嫉妬からの想像は、どんどん最悪な方への想像しか浮かんでこないであろう。自分が嫉妬していると気付いていない人は、本当は最初から分かっていなかったはずではないだろう。分かっていて、想像しているうちに、最悪な発想が思い浮かんでくろと、想像する感覚がマヒしてしまい、自分が嫉妬していたということすら忘れてしまっているに違いない。
 早苗と千尋、そして真田の三人は、いわゆる三角関係なのだろうが、この三人の関係こそ、ドラマにでもなりそうな、典型的な三角関係ではないかと思えたのだ。
 三人の関係は、意外とまわりからは知られていない。なぜなら、三人が一緒にいることよりも、それぞれに二人だけで行動している方が多かったからだ。しかもこの三人には、それ以外に普段から行動を共にする相手もおらず、大学に入学した時に少し友達ができたとしても、三角関係のような形になりかかったあたりから、他の友達を寄せ付ける雰囲気がなくなってしまっていたのだ。
 この三角関係は、しばらくこう着状態になっていた。それはそれぞれを結びつける力が均衡していたというべきであろう。三人が一緒になることが少なかったのも影響しているのかも知れない。三人三様、それぞれに性格が似ているところもあれば、まったく相容れないところもある。三人が一緒にいると、きっと三すくみの関係ではないかと思えた。誰かの力が誰かを打ち消して、それが均衡する力を生み出すことになる。
 しかし、その均衡は、もろ刃の剣のようなものなのかも知れない。そのうちの一角が瞑れると、三人の関係はまったく違ったところに行ってしまうだろう。それを分かっていたのは真田だった。三人で決して会おうとしなかったのは、真田の考えからだったからだ。
 だが、真田が三人で一緒に会わないようにしようと思ったのは、この関係性というのが単純に、
――僕を中心にできあがっているものだから、三人で会うのは危険をともないことになる――
 と考えたからだった。
 それは結果的に間違いだったのだが、三人で会わずに、単独で会っているうちに、それぞれの相手が、もう一人の女性のことを一切話さないことで、
――僕を中心だと思っていたけど、実際にそうなのだろうか?
 と思うようになった。
 その思いが次第に強くなってくるにしたがって、
――三すくみの関係だったのかも知れないな――
 と感じ、やはり三人で会うのが危険だと思ったのは、間違っていなかったことを理解したのだ。
 ただ、このままの関係の続くことが、決していいことだとは思わなかった。
 千尋の覚悟にも似た強引さや、早苗の自分では気づいていないと思われる嫉妬心の強さを感じるようになってくると、どうしていいのか分からなくなっていた。
 真田は自分のサディスティックな部分にそれとなく気付いてはいたが、それが異常性格ではないと思っていることで、三すくみの自分の部分に異常性格が絡んでいることを分かっていないことで、ある程度まで分かっていても、それ以上は分からない。そのために、考えが袋小路に嵌りこんでしまったのだ。
 真田は自分の異常性格について、そして早苗は自分の嫉妬について、少しは気付いているが、この三人の関係の中でかかわっているということを気付いていない。しかも、千尋の覚悟は、そんなまわりの関係がどうであれ、自分が突き進むだけだと思っていることで、完全にまわりを恫喝していたのだ。
 ただ、恫喝はしていたが、早苗の嫉妬心、真田の異常性格の部分を侵食することはできなかった。それぞれに自分の領域を持っていて、真田も早苗も、
――他人を寄せ付けない――
 という確固たる思いを持っていたのだ。
 頑固というべきか、それだけ自意識が過剰なのかも知れない。自意識が過剰という意味では千尋の覚悟はそれほどではないだろう。
 もっとも、自意識が過剰な人は、好きになった人のために、覚悟を持つことができるだろうか。
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次