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WHO ARE ROBOT?

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 と感じた。
 そのことが、早苗を異質と考えた理由であるが、だからといって、千尋が早苗以上に異質な雰囲気の女性であるということではないようだ。
 千尋はむしろ、
――まともな女性――
 なのかも知れない。
 ここでの「まとも」とはどういう意味なのかというと、真面目であったり、他の人とさほど違っていないという意味ではない。
――早苗に比べて――
 という言葉が頭につくのであって、言葉足らずであれば、知らない人に誤解を受けさせることになるだろう。
 しかし、頭に言葉をつけてしまいと、今度は早苗を卑下することになってしまう。それも失礼なことであって、真田の本意ではない。
 早苗も千尋も、二人とも他に友達はいなかった。真田も他に友達がいなかったことで、この三人が友達のいないもの同士で仲良くなったというのは、ある意味必然だったのかも知れない。
 最初は、この三人の関係は、すべてにおいて平等だった。だが、真田は付き合っていくうちに、千尋と早苗の関係が少しずつ分かってくるようになってきた。
――千尋という女性は、執着心が強く、早苗はそれほどでもない。その関係が二人の位置づけをしていて、表向きには平等に仲のいい友達同士として写っているだろうが、実際には千尋が早苗を離さないようにしているんだ――
 と感じた。
 早苗の方に、自分が執着されているという意識があるのか分からなかったが、二人の関係はそこまで分かってきても、まんざらでもないとしか思えなかった。それはきっと早苗の中にも千尋に対しての何かがあるからなのかも知れない。ひょっとすると、自分を成長させてくれる相手だという認識を持っているのではないだろうか。
 その思いに間違いはなかった。
「私、千尋ちゃんと話をしていると、いつも目からうろこが落ちたような感覚になるんですよ。彼女の方とすれば、別にそんなつもりもないでしょうし、他の人が聞いても何らその人にとって影響のないような話にしか聞こえないでしょうからね」
 と言っていた。
「それは、二人の間にだけ流れている独特の空気がそうさせるのかも知れませんよ」
 というと、
「そうかも知れませんね。でも、時々千尋ちゃんと一緒にいると怖いと思うこともあるんですよ」
「怖い?」
「ええ、目が据わっているいうんでしょうか? 私を見つめる目が急に冷静になるんです。いや、冷静というよりも、冷徹と言った方がいいかも知れません。まるで凍りつきそうな気分にさせられるんです」
「それはどういうことですか?」
「実際には、凍りつくような視線がそんなに長く続いたわけではないんです。というのも、彼女の視線は、じっと見ていると吸い込まれそうな視線なんでしょうけど、次第にその思いが薄れてくるんです。最初はそれがどうしてなのか分かりませんでしたが、次第に分かってきました。彼女は最初は私を見ていたんですが、途中から、私以外の誰かを見ているようなんです」
「それは、誰か他にの違う人を見ていたということですか?」
「ええ、もちろん、その場所には私と二人だけしかいませんので、他の誰かを見ていたというわけではないんです。だからすぐには自分でも信じられなかったんですが、でも見つめられているうちに、自分の後ろにいる誰かを見ているような気がして仕方がないんです」
「誰を見ていたんでしょうね? まさか背後霊が見えたりするわけではないんでしょうけどね」
「それはないと思いますよ。金縛りに遭うような視線でもないですし、実際に吸い込まれそうに感じるわけでもないんです。虚空を見つめているというと語弊がありますが、似たような感覚なのかも知れません」
 早苗の話を聞いていた真田は、不思議な雰囲気に包まれたのを感じた。
 それは、話をしている相手である早苗を巻き込んでの異様な雰囲気ではない。自分のまわりだけに存在している異様な雰囲気だった。
――ひょっとすると、早苗は僕のことを結界の外から見ているのかも知れないな――
 とも感じたが、そんな素振りはなかった。
 それは、真田の勘違いなのか、それとも早苗には分かっているが、それを顔に出してはいけないと思い、それができる力を持っている女性なのかのどちらかなのだろうが、真田には後者のように思えて仕方がなかった。
 それが、早苗と二人きりで話をした時の会話で覚えている話だった。早苗とは時々二人で会うこともあったが、ほとんどは他愛もない会話が多かった。
 真田は千尋とも二人きりで会うことがあった。
 この三人の関係は、お互いに恋人同士でもないのだから、男女が二人きりで会うことを戒めるというような雰囲気はなかった。
――嫉妬って本当にないんだろうか?
 と真田は危惧していたが、それならば、わざとそれぞれと二人きりで会って、どちらかの嫉妬心を掻き立ててみたいという思いがあったのも事実だ。
 真田にはそういうところもあった。自分にサディスティックなところがあるというのは、それまでに感じたことがなかったことだ。それはただ単に、それまで友達がいなかったことで、サディスティックな気分になる要素がまったくなかっただけのことだった。
 ただ、真田の考えの中には、
――サディスティックな内面は、誰にでもあるというもので、それを表に出すか出さないかというのは環境で変わってしまったり、何かのきっかけで一気に表に出てくることだってあるのではないだろうか?
 というものがあった。
 だから、自分に、
――サディスティックな面があるんじゃないか?
 と感じた時、疑ってみることはなかった。
 他の人が自分のS性に気付かないのは、
――絶えず、自分の考える異常性について、否定から入る癖を持っているからではないか?
 と考えたからである。
 その思いは子供の頃から持っていて、大学に入学してからも変わっていない。むしろ早苗や千尋と知り合ったことで、余計にその思いが固まってきたことを自覚し始めていた。
――僕がこんな風になったのは、異様な幼児体験をしたからなのかも知れない――
 と思っている。
 しかし、その記憶は自分にはない。ただ、子供の頃からまわりの大人が真田の時々口走る異常とも思える言動に明らかな怯えを感じているのは肌で感じていた。だからこそ、友達を作ることが自分にはできなかったのだと感じているのだった。
 千尋が真田を好きになったのは、彼を独り占めしたいという自分の気持ちだけではなく、真田の異常性格について気付いた頃から、彼のことが気になって仕方がなくなったようだった。
 そのことを早苗は知らない。
 真田の異常な性格に関してはなんとなくではあるが気付いていたようだが、そこに目を瞑って行こうと思ったようだ。
 早苗は相手を美化してしまうところがあり、相手に欠点があっても、そこはなるべく見ないようにしようと思っていたのだ。
 いわゆる、
――お花畑的な発想――
 だと言えるのだろうが、そのことを早苗は意識していない。
 そのせいもあってか、自分が真田に惹かれているような気がしてきた時、
――どうして惹かれてしまうのかしら?
 少なくとも自分のタイプの相手ではないはずだった。
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次