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WHO ARE ROBOT?

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 三すくみというと、じゃんけんであったり、ヘビ、カエル、なめくじの話であったりと、それぞれの個性を相手に打ち消されるのだが、三者三様それぞれの距離が均等であり、まるできれいな正三角形を描いたリアルトライアングルであった。
――誰が誰に――
 という見え方が最初にあって、三すくみを感じたわけではなかった。
――三すくみ?
 という思いが最初にあり、そこからそれぞれの関係を見るような目が芽生えてきた。
 そのせいもあってか、三人の関係がある程度分かってくるまでにはかなりの時間がかかった。
――下手をすれば、三すくみを感じない方が、三人の関係性を早く分かったのではないだろうか?
 と感じたのだ。
 坂崎教授は話した。
「実は、三すくみという関係を私は重要視したんだよ」
 教授は、まるで島田の心が読めるかのように、三すくみの話を始めた。
「私はこの研究を最初から三すくみが研究の基礎であるということを以前から考えていて、ロボット研究よりも、三すくみの関係の方を最近では重要に考えるようになったんだ。だから研究員も増やして、私がロボット研究以外に力を注げるようにしたのはケガの功名だったんだが、集めた研究員が三すくみに適用するということに気付いた時は、私も歓喜したよ」
 と教授は身を乗り出すように話した。
「どういうことですか?」
「ロボット研究の最初のとっかかりは、確かにに人間の魂をロボットに注入することから始まったんだが、そのうちに三すくみを考え始めた」
「それは、教授の親友の方の魂が最初ですよね?」
「ええ、そうです。以前にも話したように、その後の研究で、ロボットに注入した魂を移植することで、他のロボットを活用できるようになったんだ。しかも、開発したロボットを大量生産しても、一人の魂を分散して格納できる技術も開発した。だから、安価なロボット開発には成功したと言ってもいい」
「ロボット工学三原則はどうなるんですか?」
「それが問題だったんだ。確かに大量にロボットを作ることができたのだが、しかし世の中うまくできているもので、魂を分散する時に、魂の力の中で、人間としての欲望は消えてしまったんだよ。つまりは、人間に服従するロボットを作ることができるんだ。これはロボット開発の第二段階としては、大成功だと言えるだろう」
「じゃあ、三原則がなくとも、人に危害を加えたりはしないということですね?」
「そういうことになるね。だけど、そのために、ロボット本来の力がかなり落ちるんだ。下手をすると、人間の方が役に立つかも知れないというところまで低下する場合がある。それは時と場合なんだが、研究のプロセスとしては成功と言えても、最終目的までには程遠いということになりますね」
「なるほど」
「そこで国は今回秘密裏に、犯罪者や精神異常の人間を隔離して、彼らの魂をロボットに格納することを考えた」
 教授は何を言い出すのか、次第に島田は怖くなってきた。
「それはまるで神への冒涜のような考え方ではないですか?」
「そうとも言えるんだが、それは条件付きなんだ。それは今開発しているロボット研究の成果が表れなければ、彼らの魂を注入して、人間としてではなくロボットとして彼らを使うという考えだね。確かに人道的にはありえないことであり、神への冒涜になるんだろうが、それも死刑をなくすという条件や、精神異常者を人間としてロボットに注入することで役立たせるという考えなんだ。実はその後の段階としては、植物人間や、回復の見込みのない人間へのロボットへの移植も考えられている。これが今のロボット開発の現状なんだ」
 という教授の意見だった。
「それは、ロボット工学三原則を克服できないための苦肉の策にしか思えませんが」
 というと、
「その通りさ。だから、私はそれに代わる研究を行い、そしてそれを国家に納得させなければならないんだ」
「それが三すくみということですか?」
「ああ、そうなんだ。三すくみは、優位性の均衡を三人の間で均等にして、お互いにその力を打ち消そうとする力があるんだ。だけど、本当は三人の力を合わせると、その力は無限なんだよ。三すくみというと、力を打ち消すことだけが強調されて無限の力を誰も考えようとしない、それは人間の発想の限界なのかも知れない。一歩進んで考えればそこには大きな力が潜んでいるのにね」
 教授の話に信憑性を感じてきた。
――なるほど、それなら分かる気がする――
「三すくみの力は、その人たちの魂を人間の中から取ってしまうことはないんだ。それぞれの三すくみの中で想像する力が創造につながって、まったく新しい力を生み出す。この研究員の中にもいるじゃないか。君の知っている真田君と、彼を取り巻く二人の女性」
「教授はそれをご存じだったんですか?」
「ああ、知っていたよ。彼らのおかげで三すくみの発想を生むことができた。そして彼らの三すくみの力は、今新しいロボットに注入されようとしている」
「それを真田さんはご存じなんですか?」
「それはないと思うよ、分かっていればせっかくの力が半減するからね」
「教授はどうしてその話をこの僕に?」
「実は、僕も君と三すくみの関係にあるんだ。君は知らないはずなんだけど、その力を君に提供してもらおうと思って、今私は君に話をしている。君は意識することなんかないんだ。ただ普通にしていれば、君も我々の仲間に入ることができる」
「どういうことなんですか?」
「僕の親友が実は君を知っていてね。君との関係が私との三すくみに気が付いたのは、実は彼なんだ。彼を君が知らないことでまだ三すくみにはなっていないんだけど、ここで三すくみになることで、スイッチが入って、ロボット開発に著しい発展が望める。しかも彼は医学の知識もあるので、医学に精通したサイボーグになれるんだ」
「じゃあ、僕にロボットを作るための三すくみを提供してほしいと?」
「そうだね。それに君が希望すれば、君もサイボーグになることができる。身体が強靭というだけで、サイボーグも悪くはない。実は、その人の遺伝子をそのまま移植できる技術も開発済みなので、寿命を迎えれば、死ぬことだってできる。しかも、苦しまずにだ。これほど素晴らしいことはないんじゃないか?」
 島田はその話を聞いて、心が動いた。
 その瞬間、島田は気が遠くなり、気絶してしまったようだ。
「気が付いたかな?」
 そこは手術台のようだった。
 目の前には教授、真田、千尋、早苗が控えている。そしてその奥に見覚えがあるようなないような人が白衣を着てこちらを見ている。その目は冷静で、恐ろしいくらいだった。
「今から君をサイボーグにしようかと思うがどうだい? 選択の権利は君にある」
 皆を見ると、すべてサイボーグにしか見えなかった。
「僕は、俺は、私は……」
 とまで言えたが、また気を失ってしまった。
「島田君」
 自分を揺り動かすように起こそうとしている人、それは真田だった。
「どうしたんだ? 僕は」
 あっけにとられている島田を見ながら真田は微笑みながら、
「一緒に呑みにきて酔い潰れたんじゃないか。君がこんなに弱いとは思わなかったよ」
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次