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WHO ARE ROBOT?

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 この話はこの切り口からでしか話が進まないのか、それともどんなに相手を気遣って前後を考えたとしても、この切り口にしかならないのかのどちらかでしかないのだと島田は思った。
「まあ、殺してほしいというのは大げさなのかも知れないが、私にはその時の彼の心境が、そういっているようにしか思えなかったんだ」
「どういうことですか?」
「ちょうど、私たち研究員はその時、あることに気が付いていた。そのことは他に漏らすわけにはいかなかったんだが、なぜか彼だけには看過されていたんだ」
「えっ?」
 それを聞くと、島田はあることが頭に浮かんだ。
「君にも理解できたようだね。そうなんだ。彼も私や君と同じように不思議な力があるようなんだ。その力というのは、彼には私が考えていることがその時には分かったというんだ。きっと、何かの覚悟が最初からあって私を見たから見えたものがあったんだろうね。彼のほしいものを私の中に見たんだよ」
「なるほど、覚悟のある人間には、他の人には見えないものが見えたりすると聞いたことがあります。しかもそれが自分のほしいものとピッタリ合っていれば、ハッキリと見えたとしても不思議はないですよね」
「それが何かというと、ロボット開発において、人の魂を格納できるロボットというものを開発できることが可能だということだったんだ。これは今ではこの研究所だけではなく、ロボット研究者の間では暗黙の了解のようになっているんだが、最初は私たちの研究所だったんだよ」
「そんなに前からこの研究は開発されていなかったんですね?」
「ああ、だが、どうしてもロボット工学三原則が邪魔をするので、開発の可能性が深まっても、なかなか先には進まない。なぜなら、ロボット工学三原則自体が矛盾からできているので、まずは矛盾を壊さなければ先には進まない。逆にそれが一番難しいことで、研究の妨げになっていたんだ」
「それは私たち若い研究員も今感じているところです。でも、それがどうして、親友の人がいう、自分を殺してほしいという発想になるんですか?」
 と脱線しそうになるのを、何とか話を戻した。
「彼の覚悟というのは、自分がその魂になりたいということだったんだ。まだ発見したというだけで、実際にどのようにすればロボットを開発できるかというのは、何一つ具体的になっていたわけではない。それなのに、彼がいきなり言い出したのは、ロボットに魂を売るということで、それは人間としての死を意味することになるんじゃないかい?」
 教授の話は理屈としては合っていたが、あまりにも突飛なので、島田はついていけなかった。
 教授は続けた。
「彼の話としては、結局一年という期間ではさすがにそれまで不治の病とされてきた病気を治すことはできなかった。当然、彼も分かっていたのだろうが、母親は帰らぬ人となってしまったんだね」
「その人のせいではないですよ」
「そう、その通りなんだ。だから彼は母親が死んだことに対して、自分の責任を感じているわけではなかったんだ。もちろん、力不足を痛感したとは思うがね。その感情があるからなんじゃないかな? 彼がロボットの魂になろうと思ったのは」
「どういうことですか?」
「彼は魂と肉体の分離を他の人が考えているような死とは違う考えを持っていたようなんだ。いや、同じような考え方の人が多いとも言えるかも知れないな」
「それだけ、死に対しての考えがいろいろあるように思えても、実際にはそのすべてはいくつかのパターンに集約されるという意見ですか?」
「その通りだね。彼はロボットの中に入ることで、永遠の命を得ることができると思っていたようなんだ。永遠の命という言葉は漠然としているけど、肉体と分離したことで死んだことになり、もう二度と死ぬことはないという考えなんじゃないかな?」
「それだったら、死んだ人の魂ってどこに行くのかを考えると、その魂はもう二度と死なないということですよね。何か頭が混乱してきました」
 と島田がいうと、教授は、
「宗教的な考えでいけば、この世でいいことをした人の魂は、一度肉体と分離してから天国に行き、そこで生まれ変わる準備をするという考えがあるよね。悪いことをした人は地獄で苦しむという考えがその反面にはあるんだけどね」
「いわゆる輪廻転生という話ですね。でも、ロボットとしてこの世に魂だけが残ってしまうのはどう考えればいいんでしょうか?」
「輪廻転生の場合は、まったく違う人間になって生まれ変わるということになるので、永遠に生きているということにはならないんでしょうね。前世を覚えている人はいないでしょう」
「でも、輪廻転生というのは、いいことをした人だけに与えられた権利だと言えるんでしょうか? ひょっとすると悪いことをした人でも、輪廻転生を与えられる人もいるのではないかと思うんですが」
「それは、きっと悪いことをした後に、死ぬまで後悔の念を持ち、懺悔をしっかりしてきた人には与えられるものではないのかな?」
「そうかも知れませんね。でも、ロボットに魂を入れた人は、それからどうしたんですか?」
「彼はロボットというよりも、サイボーグというべきなんでしょうか? 見た目は完全に人間で、食事も摂るし、睡眠もある。本当に人間に近かったんですよ」
 それを聞いて、島田はビックリした。
「そんなにロボット工学というのは進んでいるんですか?」
 と聞くと、
「ああ、ロボットの開発が完成しないのは、三原則をどうしても越えられないからなんだ。それ以外のところでは、ロボット工学は著しい発展を遂げているんだよ。秘密裏に開発されていたので知らないだけで、コンピュータの開発よりも、先端を進んでいたんだ。もっと言えば、コンピュータの開発も、ロボット工学の研究で発見されたことが大きな影響を受けているんだよ。コンピュータだって、今では一般的になってしまっているので、その発展途上についてその進化を誰も疑問に感じないだろう? それは今が一般的になってしまったからなんだ」
 教授の話には大いに興味が持てた。
「その人はロボットになって今でも医学の研究を続けているんですか?」
「ああ、そうだよ。でも彼も最近は、少し悩んでいるようなんだ。やはり死ねないということが彼には一番の苦しみなんだろうね」
「それ以外にも苦しみがあるような気がしますが……」
 と島田がいうと、教授は頷きながら、
「その通りだよ。彼はサイボーグゆえの孤独をずっとひきづって生きてきたんだ。彼は年を取ることはない。ただ、永遠の命が与えられたと言っても、ロボット外観自体には衰えがある。つまり老朽化していくということだね。外観はなるべく衰えないようにはしているんだけど、彼の持っている能力などは次第に衰えてくる。定期的にメンテナンスは行っているんだけど、それでも科学の進歩にはついていけないところもあるんだ。そのために、彼を司っているロボットは、すでに旧式になってしまい、新しくできたロボットの性能には追いつけないという事態になってきた。
 と教授がいうと、
「でも、彼のように生身の人間から魂を注入したロボットやサイボーグは他にもいるんですか?」
 と聞くと、
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次