小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

WHO ARE ROBOT?

INDEX|25ページ/31ページ|

次のページ前のページ
 

「いや、そんなことはないと思うんだ。確かに君のいう通り、危険性を孕んでいるということに違いはないと思っているんだけど、冷静に考えていくと、うまくいきそうな気がする」
 島田は真田が何を言いたいのか、よく分からなかった。
 ただ、島田が真田にこのことを聞くことは彼に予想がついたようで、それが将来のことが分かる島田には、なんとなく感じるものがあったのだ。
「人間って、そんなに信用できるものじゃないと思えるんですが、そんな人間が作るロボットなので、下手をすると、人間よりも凶暴になりかねないと思っています」
 と島田がいうと。
「そうだよ。まさにその通りさ。人間なんて、お互いを信じているように見えているけど、それは見せかけだけで、簡単に剥げ落ちるメッキのようなものさ。絶対に信用なんかしちゃいけない」
 という真田の発想も極端で、
「そこまで考えているのなら、ロボットに魂を吹き込むという発想は、いっそう危険なものなのではないんですか?」
「そうだね。君の言う通り、確かに危険さ。でも、ロボット開発に関していえば、どうやったって危険を避けることはできないのさ。じゃあ、どうすればその危険を最小限に食い止めることができるかと考えると、人間の魂だと思ったのさ」
 という真田に、
「人間である自分がいうのも何なんですが、人間ほど利己的で、自分勝手な生き物はいないと思うんですよ。他の動物であれば、考える力はないんだけど、でも本能という生まれ持ったもので、制御できるじゃないですか。でも人間はなまじ考えることができるので、いかに自分が得することができるかということしか考えていないですよね」
 その意見を目を瞑って聞いていた真田は、
「そうだよね。人は自分の中で境界、いや結界というのを作って、その範囲内を自分のものとして抱え込んでいるんだよ。自分の子供が大切だったり、家族が大切だったり、会社が大切だったりと、いろいろ大切なものを持っているのに、その優先順位は最初から決まっているんですよ。ただ、それを守るために、犠牲にしなければいけないものもあるんですよね。それは皆同じであり、それを皆が正当化させようとするため、暗黙の了解が成立する。子供のためと言っているのは、一見美談のように聞こえますが、これこそ一番の人間のエゴであり、皆も自分に置き換えてみると、自分がその人の立場になった時、エゴだと思われたくないという思いから、美化してしまうんでしょうね」
「なるほど、その通りかも知れませんね。人は一人では生きてはいけないとよく言いますが、確かにその通りですね。でも、いちいちそんなことを口にしないといけない時点で、エゴを自分だけのものだと思えない風潮になるんでしょうね。そういう意味でも馴れ合いの感覚が人間を他の動物にない甘えを生むのかも知れませんね」
 島田も自分の意見を語った。
「島田さんは、基本的に人間嫌いなのかな?」
「ええ、そうですね。どちらかというと、人間嫌いです」
 と島田がいうと、
「ここで言い切るということは、本当にそうなんでしょうね。それも自分で思っているよりも結構その思いは強いのかも知れませんよ。でも、あなたはそれでもいいと思っている。人間嫌いという性格がそのまま個性に結びついているのが島田さんなんじゃないかって思います」
「でも、そういう意味では、よく人間という動物は高等動物として生き抜いてこれたものですね」
「いや、こういうエゴを持っているからこそ、人間は生きられたのかも知れない。人間ほどメンタル面で弱い動物もいないと思っているんですが、エゴを表に出す人、そして押し殺す人それぞれがいるから生きられたのかも知れませんね」
「じゃあ、真田さんは、他の動物にもメンタル的なものがあると思っているんですか?」
「ええ、私はそう思っています。他の動物には人間のような言葉はありませんから、人間には彼らが何を考えているのか分かりません。だから何も考えていないという発想でごまかそうとしているのかも知れないと思うんですよ」
「つまり真田さんは、人間は自分たちの信じられないことにはすぐに蓋をしたり、人間の考えられる範囲でごまかそうとしているとお考えなんですか?」
「ええ、そうです。他の動物にだって、本当は考える力があって、その動物同士で人間の言葉にあたる何かがあるんだって思うんですよ。そうじゃないと、本能だけで生きられるとは思えないからですね」
「でも、それもしょせんは人間の考え方。それを真田さんは分かっておられる。自分で言いながら完全ではないことをよく分かっていらっしゃるんでしょうね」
「ええ、よくお分かりですね。人間は自分の意見を必死で相手に訴えようとするのは、それだけ自分の考えであっても、完全には信用できないからなんじゃないかって思います。人間にはしょせん、完璧なんて言葉はありえないんですよ」
「人間に完璧という言葉がないのであれば、他の動物にもないんじゃないですか?」
「そんなことはないと思います。何か完璧なものがなければ、この世で存在しているものは張子の虎のように、風が吹いたり水に濡れただけで剥げ落ちてしまうんじゃないかって思うんですよ」
「なるほど、真田さんの考えがおぼろげですが分かってきた気がします」
 島田は、ある程度理解はしていたが、完全に分かったわけではない。
 おぼろげという表現を使ったのは、少しでも分かってきたことを強調したいのだが、完全ではないということも分かってほしかった。そのための苦肉の策だと言ってもいいだろう。
 今度は真田が島田に言いたかった。
「真田さんはどうなんです? 人間嫌いなんですか?」
「ええそうです。それも島田さんよりもこの思いは強いかも知れないですね」
「どうしてですか?」
「さっき、島田さんは、どちらかというと、という前置きを置いて、人間嫌いであることを話してくれましたね。それは人間嫌いなんだけど、それがどこまでの範囲での人間嫌いなのかを自分でも分かっていなかったからだと思うんです。ということは、島田さんはさっき私が言ったよりも、自分で思っているよりもその思いは強いのかも知れませんが、私に比べればまだまだのような気がします」
「というと?」
「島田さんが、ランクでいえば、中の上だとすれば、私は上の下というところでしょうか? 一種のどんぐりの背比べに見えるかも知れませんが、この間にある溝は、結構深いかも知れません」
「今のたとえは、なんとなく分かった気がします。でも、そんなに溝が深いんですか?」
「ええ、深いですよ。一番大きな理由は、島田さんに自覚がないということだと思っています」
 真田は言葉を続けた。
「島田さんは、人間の嫌なところを具体的に口にできますか?」
 と真田に言われて、
「そうですね。さっきのエゴというところには共感できましたが、改まって言われると、難しいところですね」
「そうだと思います。それは実際に人間の嫌なところを思いついてはいるんだけど、それを口にすることで、相手に嫌われたらどうしようという発想が頭にあるからではないですか?」
 そう言われて島田は黙り込んでしまった。
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次