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WHO ARE ROBOT?

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「あれは、高校生に入った頃くらいだったでしょうか? 本当はもっと前から気付いていたんですが、確信に変わったのが高校生になった頃でした。中学時代には、この力が自分以外でも誰にでもあるものだと思っていたので、意識もしていませんでした。でも、友達との話の中で、それが自分だけの力だって知って、実はショックを受けたんです」
「どうしてショックだったんですか?」
「だって、他の人にない力を自分だけが持っているというのは、不気味な気がしたんですよ。中学生の頃の私は、いつも何かに怯えているような気がしていて、他の人と違うことがあれば、いちいちショックを受けていましたね。自分が何かに怯えているというのが、他の人との違いを感じた時だということに気付いていませんでしたからね」
 と教授がいうと、
「でも、今はロボット工学の研究を率先してやってらっしゃる。何かのきっかけのようなものがあったんでしょうかね?」
「それはあったと思います。ロボット工学の研究は、実は私が最初ではなかったんです。高校時代に一緒になって、将来ロボット工学の研究をしようと話をしていた友達がいたんですが、彼の方が私よりも気持ちは強かったと思います」
 教授はそういうと、少し力が抜けたような表情になった。その顔は気持ちに翳りを見せていて、
「その人と一緒に研究されていたんですか?」
 本当であれば、少し黙っている方がいいのかも知れないと感じた島田だったが、どうしても聞きたくなった。
「いいえ、彼とは一緒に研究をすることはありませんでした」
「そうなんですね」
 本当はそれ以上聞いてみたかったが、その時の島田は、今の解答だけで十分だと思っていた。
 しかし、少し経ってから教授がおもむろに語り始めた。
「一緒に研究をしたかったのはやまやまだったんですが、どうしてもできなかったんです。その時の友達は、大学への入学が決まってから少しして、死にました」
 という教授の返答に、少し間を置く形で、
「えっ」
 と小さな声で島田は答えた。
 時間的には数秒くらいの間だったのだろうが、空気が凍り付いてしまったかのような雰囲気に島田自身、数十分くらいの時間が掛かったかのように錯覚していた。
 島田は、時間が凍り付いてしまうような感覚を何度か感じている。まわりは時間が止まっているように感じていたが、実際には微妙に動いている。それを、
――時間が止まってしまったんだ――
 と感じてしまうと、
――元の世界には戻れないかも知れない――
 と感じていた。
 島田は、教授の友達が死んでしまったという話を聞いた時、
――自殺?
 根拠があったわけではないが、そう思った。
 しかし、その思いは時間が経つにつれて、リアルに感じられ、次第に自殺以外には感じられなくなっていた。
 島田は教授にそのことを聞きただす勇気はなかった。聞きたいという気持ちは間違いなくあったのだが、聞いてしまうと、自殺という最初に感じた衝撃が半減してしまうと思ったのだ。
 普段から怯えや恐怖を人一倍嫌っているにも関わらず、この時ばかりは、聞いてしまって半減する恐怖を自分から拒否していたのだ。
「じゃあ、教授は大学に入って、一人ロボット工学の道を志したんですか?」
「ええ、もちろん、研究所の中のメンバーの一人なので、単独というわけにはいきませんでしたが、意外と研究員は自由に研究をさせてもらっていました。島田さんの情報処理のように決まった路線があるわけではないので、どうしても手さぐりでしたね。でも、いつ解散させられるか分からないという不安も、背中合わせでした。研究員は誰もそのことを口にする人はいませんでしたが、私はあまり気にしないようにしていました。でも、私独自の発想から論文を書いてみると、それが意外と評価が高く、現在の教授の地位まで、思ったよりも早く上り詰めることができました」
「なるほど分かりました。それが教授のステータスというわけですね?」
 と島田がいうと、教授は分かったかのように、
「そういうことです」
 とニッコリと微笑んだ。
 ここまで会話をしてくると、島田には教授の人となりが分かってきて、
――ロボット工学というのも面白いな――
 と感じるようになった。
「分かりました。じゃあ、私も一緒にロボット工学を目指します」
 と島田がいうと、
「そうですか。これはありがたい。あなたの能力を私と一緒に研究していきましょう」
「ええ」
 これで島田の研究所入りが決定した。
 しかし、その時島田は、教授の考えていることの本心を分かっていなかった。教授は島田の中にもう一つ能力があることを分かっていた。
 それは、島田と対面して分かったことだった。それまでは自分と同じように将来のことが分かるという程度の能力しか把握していなかった。しかし、実際には、
――もう一つ能力を持っているのではないか?
 という思いがあることを感じていた。
 それが何であるか分からなかったのだが、この時自ら面談に訪れた理由は引き抜きだけの理由ではなく、もう一つの能力の有無の信憑性について、実際に会うことで確信を持ちたいと思ったからであった。
 それでも、もしその能力がなくても、島田を引き抜くことは決まっていた。研究員が不足していることもその理由だったが、教授にはもう一つ理由があったのだ。
――あいつの生まれ変わりなのかも知れないな――
 あいつというのは、高校時代、一緒にロボット工学の道を目指そうと思っていた友達のことである。
 実際には彼は島田の想像した通り、自殺であった。理由に関しては坂崎教授も分かっていない。何しろ大学に入学も決まって、いよいよこれから好きなことができ、将来を目指せると思っていた矢先のことだったからだ。

                 三すくみ

 実は、彼にも島田と同じ力が備わっていた。
 それは、
――自分の将来が見える――
 というものではなく、島田が持っているのではないかと思われる、
――もう一つの能力――
 だったのだ。
 島田は教授に誘われ、さっそく研究所に入所したが、そこで知り合った真田と意気投合し、お互いに、
――こんなにも気が合うやつがいたなんて――
 と感じさせる相手であった。
 ただ、島田は引き抜きにあった人ということで、真田は一目置いていた。だが、島田はそんなことにはお構いなしに、同僚のつもりでいたのだ。
 島田は真田を、真田は島田を、それぞれ尊敬していた。
――お互いにないものを持っている――
 という感覚が一番強かった。
 島田が真田の研究に興味を持ったのは、
「ロボットの魂」
 という発想だった。
 ロボットにはあまり人間らしい感情を含めてしまうと、三原則を侵しかねないというのが一般的な考えであろう。ロボットにはあくまでも人間に従順で、人間に危害を加えないようにしなければいけない。それが三原則の大前提になるからだ。
「真田さんは、ロボットに魂を吹き込むような発想を持っておられるようですが、それって普通に考えると危険なんじゃないですか?」
 と島田がいうと、
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次