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WHO ARE ROBOT?

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 とほどの説得が行われたに違いない。しかし、どんな説得をすれば、社長が納得のいく回答が得られるというのだろう。島田には想像もつかなかった。
 すると、教授が語り始めた。
「君は、将来のことが自分で分かる性格なんだよね?」
 と静かに語った。
 ビックリしている島田を見ながら教授は構わずに続ける。
「私も実は同じ能力を持っているんだよ。この能力を持っている人は最初君は、まわりの人皆だと思っていただろう? でも今は自分だけだと思っているはずだよ。でも、実際には君だけではない。少なくとも私もその一人だ。だから君のことは誰よりも分かるつもりでいる。ひょっとすると君よりも分かっているかも知れない。それを思うと、君を私が預かるのが一番だと思うようになったんだよ」
 と言った。
「どうしてそのことを?」
「君は私に雰囲気が似ている人を見たことがあると思うんだ。その人は私とは関係のない人なんだけど、その人に対して感じた思いがあったことで、私は君のその能力を感じることができたんだ」
 という教授の話に、
「よく分かりません」
 というと、
「そうだろうね。私も説明は難しい。とにかく、私は君を知ってしまった。だから社長を説得して、君を預かりたいと願って、ここに赴いたわけだ」
 と、坂崎教授は大切なことを、実にサラリと言ってのけた。
 少し考えていると、坂崎教授が話始めた。
「君は、自分の将来のことが分かるというのはありがたいことだと思っているかね?」
 と聞かれ、痛いところを突かれたと思った。
 確かに将来のことが分かるというのは、何かの対策を取れるという意味ではいいことなのだろうが、漠然としてしか分からないので、対策を考えるのも難しい。しかも、誰かがそのことを分かっていて助言してくれたり、実際に助けてくれるのであれば考えようもあるが、どうしても限界を先に感じてしまうと、将来のことが分かってしまうのは、却って困ったものだった。
 しかも、分かるというのは自分のことに関してのことだった。自分以外のことで、何がどう影響してくるのか分からないのに、自分のことだけが分かっているからといって、何かの対策などできるはずもない。対策を取ることもできないのであれば、将来のことが分かるなど、こんな迷惑なこともない。
 そんなことを考えていると、
「そんなにありがたいことだとは思いませんね」
 と答えるしかなかった。
 口調は、完全に面倒臭そうに感じだった。
――嫌なところをいまさらつかないでほしい――
 という気持ちが表に出ていた。
 その気持ちはきっと同じ立場に立った人は、皆感じることではないかと思うのだった。
 他の人と関わることを嫌いな島田なのに、なぜか、自分のことを考える時、まわりの人はどう考えるのかということを感じてしまう。これは、島田に限ったことではないのだろうが、ここまで無意識なのは珍しい。そういう意味では、真田と似たところがあるとすれば、こういうところになるのではないだろうか。
 教授はそんな島田の気持ちを知ってか知らず科、話をし始めた。
「将来のことは分かるというのは、本能的なものであり、最初はありがたかったのではないかと思います。実際に私もそうでした。まるで目の前にタイムマシンがあり、それに乗って未来に行って、自分の将来を見てきたような気がしたからですね。ただ、ここでタイムマシンとの大きな違いというのは、タイムマシンで見るものはリアルな光景であり、そのために自分以外の人の未来も見えてしまう。でもこの能力は自分のことしか分からないということですよね。自分のことしか分からないので、漠然としてしか分かっていないような気がするんですよ。リアルではない感覚に、憤りすら感じてしまうのかも知れませんね」
 と教授がいうと、島田はタイムマシンに関しては自分なりに造詣も深く、いろいろな発想を思い浮かべていた。
「確かにそうですよね。でもタイムマシンというのは、過去に行くことに関してはかなりのリスクがありますが、未来に行く場合にはそれほどのリスクは感じません。どうなんでしょうね?」
 というと、
「それはパラドックスの発想ですね。過去を変えてしまうと、未来が変わってしまう。つまり今がその未来であり、変わってしまうと、タイムマシンに乗って過去に行くという現実も、別の世界の出来事のようになってしまうからですね。これがいわゆるパラレルワールドの発想ですね」
「その言葉は知っています。それは過去、現在、未来と繋いでいく時間の中で、一つの点を焦点にして、末広がりに広がっていく発想であり、それは無限ではないかという思いでもありますよね」
「ええ、そうです。だから、タイムマシンの開発は難しいんですよ。論理的に製造可能でも、それが倫理的にあり得ることなのかという発想がどうしても付きまとう。しかもそれがパラレルワールドを見てしまうことになると、何が正しいのかが分からなくなる。収拾がつかないということになりますよ」
 という教授の話を聞いて、うんうんと島田は頷いていた。
「教授は、ロボット工学がご専門だということですが、ロボット工学というのも、矛盾を孕んでいるんじゃありませんか?」
 と、島田は本題に近づくように話してみた。
「そうですね。私はロボット工学を志したのは、ロボット工学三原則というのを見た時だったんですよ。私も子供の頃は、まだまだ特撮やアニメ番組も発展途上で、それだけにロボットもののマンガなどは新鮮な感じがしました。ハッキリとテーマが三原則に沿ったものだって分かるものが多かったからですね」
 教授は少し白髪交じりの頭を掻いて見せた。
――年齢的には五十歳を少し超えたくらいではないだろうか?
 と感じた。
 その年代の子供時代というと、ちょうど昭和四十年代くらいであろうか。ロボットもののマンガやアニメ、特撮が流行り始めたのがちょうど昭和四十年代後半くらいになるだろうか。それを思うと、教授のロボットへの造詣は分かる気がした。
「ロボット工学三原則を教授は最初から知っていたんですか?」
 と聞いてみると、
「そうではないですよ。よく読んでいたロボットマンガの最初に、三原則が書かれていたんです。最初は何のことなのか分からなかったんですが、読み込んでいくうちに疑問に思うと、最初に戻って三原則を読み直してみたりしました。そうすると、ストーリーに対しての疑問が三原則を読むことで解消していたのを思い出しますね。今のアニメや特撮にも通じるものもあるんでしょうが、どこか新鮮さに欠けるような気がしているんです。今でもロボットの研究をする時、子供の頃に感じた新鮮さを思い浮かべながらであることを意識しています」
 という教授の話は説得力があった。
「ところで教授は、私と同じように、未来のことが分かるとおっしゃいましたが、それを感じられたのはいつ頃だったんですか?」
 という島田の質問に、
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次