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WHO ARE ROBOT?

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――ロボット工学三原則――
 に逆らわないようにしないといけない部分で、矛盾や障害、かなりの部分において危険性を孕んでいることは分かっていた。
 真田は自分としては、
――他の研究所で研究していないようなことを研究する――
 というのが、彼のやり方であり、ポリシーだった。
 これはある国営放送がロボット研究について研究している国立大学の権威である博士号まで持っている有名な先生をゲストに招いて、特番を組んだ時の内容である。
「ロボットというのは、人間といかにうまくやっていけるかというのが一番の問題なんですよね」
 と、進行役のアナウンサーが言った。
「そうです。昔からロボット工学には三原則というものが存在していまして、それはあくまでも人間側から見て、ロボットをいかにうまく扱うかということを定義したようなものです。それが守られないと、ロボットは反乱を起こしたりして、我々人間のために開発したロボットに、人間が滅ぼされてしまうことになりますからね」
「なるほど、今までにたくさんのロボットアニメや特撮が製作されてきましたが、その中のかなりの部分において、このテーマが問題になっていますね。特に半世紀前ほどは、その兆候が大きかったと思われますが」
「ええ、三原則を著した人は、彼の中での作品のネタとしての発想だっただけなのかも知れませんが、ここまでいろいろな人がその発想をリスペクトしてきたということでしょうね。だから、我々研究者も、心して考えなければいけないんですよ。何しろ我々の研究では、フィクションは許されませんからね」
 教授の話は当たり前のことを当たり前に話しているだけで、特に問題にするようなところはなかった。
「さすがに、国営放送だな」
 と、真田は感心して聞いていた。
 昔から国営放送というと、民間と違ってその言動の影響力は絶大だった。細かい点でも、他の放送局でおおっぴらに言われていることでも、言葉にできないこともあると思っている。
 たとえば、大型連休というのがあるが、それを民間では、
「ゴールデンウイーク」
 と呼んでいる。
 しかし、この言葉は、ある企業が言い出した言葉だということで、スポンサーを持つことのない国営放送では、一企業をひいきするような言葉を口にするわけにはいかない。だから表現するとすれば、
「大型連休」
 としか言えないのだ。
 そのことを知っている人は、ほとんどいないだろう。国営放送だけが、
「大型連休」
 としか言っていないなど、誰が気付くものか。
 そういう意味では国民もあまり関心がないというか、厳しすぎる国営放送を毛嫌いしている国民も多いのかも知れない。
 その時の特番で、
「ロボットというのは、人工知能が大切ですが、どこまでロボットに知能を持たせるかということが問題なんです。あまりにも陳腐な発想しか持っていないのであれば、ロボットである必要はない。最初から知能などなく、人間の操作だけで行動するものであればいいはずですよね」
「確かにその通りです」
「じゃあ、人間に限りなく近い知能を持ったとすればどうでしょう?」
 と聞かれて、答えを出せないでいる司会者をあざ笑うかのようにニンマリと微笑んだ教授は、
「自分たちの心を持つことになります。心を持ってしまうと、ロボットはかつての人間のようにお互いの立場や、まわりとの関係を考え始めて、自分たちの置かれていることに理不尽さを感じないとも限りません。だから、人工知能には、そんなことを感じないように、あくまでも人間には従順で、人間とは絶対的な主従関係を叩き込んでおかなければいけなくなるんですよ」
「それでいいのでは?」
「ただ、そうなると、彼らの中の人工知能は少しずつ成長しているんですが、成長の度合いによっては、理不尽な思いに感情をマヒさせるという力が生まれてきます」
「それがどんな問題に?」
「感情をマヒさせるという力を持つことは、せっかく組み込んだ大切な三原則の考え方もマヒさせてしまう可能性が出てきます。そうなると、人間では制御できず、最悪の結果を招いてしまうことになるのではないでしょうか?」
 その話を聞いた時、真田の中に一つの考え方ができた。これは教授と話をしたことはないが、同僚の島田との会話で少し深入りしたような雰囲気で話をしたことがあった。
 島田というのは、自分と同期であり、彼も同じ大学からではあったが、真田と違って彼の場合は、教授から引き抜かれたことでの研究所入りだった。
「俺は元々、ロボット工学になんか興味はなかったんだ」
 と言っていた島田は、本業はコンピュータのソフト開発が専門だった。
 大学を卒業してコンピュータメーカーに就職が決まっていたが、そこを教授が引き抜いたという。
 どのように説得したのか分からなかったが、いまだに彼はロボット工学に対して真剣に取り組んでいるのか疑問に思えていた。
 そんな島田とはなぜかウマがあった。研究員の中で島田は浮いた存在だったが、やはり引き抜かれた特別な存在であるにも関わらず、公然とロボットに興味がないことを口にしているのだから、まわりから反発を受けても仕方のないことかも知れない、
「僕も、本当はロボット工学をやりたかったわけではないんだけど、なぜかここにいるんだよね」
 というと、
「じゃあ、何をやりたかったんですか?」
 と島田に聞かれたが、
「これと言ってはなかったんですよ。以前は心理学についての研究をしたいと思っていたんだけど、まさかロボット工学の研究をするようになるなど思ってもみなかったですね」
 と真田は答えた。
 真田は、大学三年生までは心理学を真剣に勉強していた。しかし、心理学を勉強していても、就職に何か有利になるはずもなく、現実的ではなかった。心理学を専攻していたなどというと、就職の時に、
「こいつは理屈っぽいやつのようだな」
 と思われてしまって、不利になるのではないかと思えた。
 そのことにどうして就職活動寸前まで気付かなかったのか、自分でも不思議だった。
 就職活動という点では、情報処理関係を専攻していた島田には、苦労はなかった。彼は成績もよく、教授からの信用も絶大だったことで、就職先に関しては、こちらが選べるほどだったのだ。
 彼にとっては、
――贅沢な悩み――
 だった。
 実際に就職先を決めるための贅沢な悩みは、彼なりにいろいろ考えたようだ。いくら贅沢とはいえ、悩みであることに変わりはなく、レベルの違いというだけで、就職活動で悩みのない人間などないに違いなかった。
 ただ、まわりからはどう見ても、贅沢な悩みでしかなかった。いくら本人が苦笑いを浮かべても、それは嫉妬や妬みの対象でしかなかった。
 島田という男は、子供の頃から同じような悩みを抱えてきた。
 子供の頃から何でも無難にこなせてしまう彼には、まわりからは、
――苦労もせずにできてしまうんだから羨ましい――
 という目でしか見られていなかった。
 彼としても、別に努力をせずに何でもこなせているわけではなかった。他の人よりも先に行動し、問題点を絞ることにも長けていて、他の人が問題点について、何も考えていない間から、絞った問題点への解決方法を考えていた、
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次