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WHO ARE ROBOT?

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 そういう意味ではおおらかな性格を保ったまま、暗かった高校時代を駆け抜けて、大学時代に突入したと言える。
 いや、それは異性に関してのことであった。高校時代の早苗は、千尋のことが気になってしまった時期があった。千尋の方も早苗を意識していたことで、お互いに相思相愛のような関係だったのだろうが、恋愛感情が強かったのは千尋の方だった。
 早苗は、親友というイメージが強かったが、千尋に対して従順でしかなかった自分が、まるで男性を相手にしているように感じていることを不思議に感じていた。
「早苗は、自分の気持ちを表に出すことが苦手なんだね」
 と言われたことがあったが、
「えっ、そうなの? そんな風に感じたことなんかなかったわ」
 と、千尋の言葉をやり過ごした。
 しかし千尋はそんな早苗を見て、
「そんな誰もが答えるような返事をするところが、気持ちを出していないっていうの。あなたには、自分で気付いていない可能性を秘めているのよ」
 と切々と千尋は語った。
 その言葉を聞いた時、
――私は千尋のことが好きになったのかしら?
 と感じた。
 中学時代に感じた異常性癖をその時に一緒に感じたのだが、それは女性に対して、男性に感じるはずのドキドキを感じてしまったことが原因だと思っていた。
「千尋は、自分を正直に表に出せるというの?」
 と聞くと、
「いいえ、私にはできないわ」
 と言っていた。
「じゃあ、どうして私にはハッキリとそのことを言い切るの?」
「あなたは、自分の気持ちを押し殺すタイプに見えないからよ。おおっぴらな性格から、思ったことを口にすることで、まわりにスカッとした気持ちにさせるそんな力があるように思うのよ」
 という千尋の言葉に、
――褒められているのかしら?
 と早苗は感じた。
 すると、千尋は早苗の気持ちが分かっているのか、
「別に褒めてるんじゃないからね」
 と言われて、思わず、
「あっ」
 と言ってしまった。
 そんな早苗を見て千尋は苦笑いをしながら、
「ほら、すぐにあなたは気持ちが顔に出る。顔には出るのに、顔以外のところで表現するのが苦手なのよ。だからあなたは自分の気持ちを表に出したいという願望がありながら、どうしていいのか分からないために、いつも肝心なところで躊躇する。それがあなたが苦手だという言葉になるのよね」
 と千尋から言われた。
 そんな千尋と話をしていて、
「まるで心理学の先生みたいね」
 というと、
「別に私は心理学に造詣が深いわけではないのよ。ただ思っていることを口にしているだけで、あなたにはそれができるって思っていたの。でも、もしそれができないのであれば、心理学の勉強をするというのも悪くないと思うわ。いや、あなたのような人ほど心理学を勉強した方がいいのかも知れないわね」
 と千尋は真顔でそう言った。
 早苗が心理学を勉強するようになったのは、その頃からだった。最初は千尋の言葉を半信半疑で感じていたが、時間が経つにつれて、千尋の言葉が早苗の中で大きくなっていった。
――私って、いつも否定から入るくせができてしまったのかも知れないわね――
 と感じていた。
 否定から入るということは、最初は百パーセントに近いものから、少しずつ否定していくことで、まわりに覆いかぶさっているものを取り除くことで本来の姿を見ることができると思っている。
 つまり、世の中のものは、
――すべてが余計な鎧のようなものに包まれていて、それを取り除かないと、本来の姿が見えてこない――
 と思っていた。
 おおらかな性格なのに、今までやってこれたのは、天真爛漫に見える性格の中で、まわりを最初から信用していないという感覚が、彼女に辻褄を合わせる力になっているのではないだろうか。
 早苗は自分の性格を千尋によってある程度形にされた気がしていた。
――千尋がいなかったら、自分の本来の姿を見ることなどできなかっただろうし、真田さんと知り合うこともなかったんだろうな――
 と早苗は考えた。
 もちろん、今でも自分の本来の姿など見えるわけはないと思っている。そう思うことはおこがましいことだと感じているからで、ただ、普段から否定からしか入ることのない自分を少しでも解消するには、少々おこがましいくらいの方がちょうどいいと思っているのだった。
 大学に入って真田と知り合った早苗は、真田に対して、
――彼には自分にはない何かがある――
 と感じていた。
 それは新鮮に見えることで最初はそれが何だか分からなかった、
――ひょっとして、正反対の性格なんじゃないかしら?
 と感じるようになったのだが、その感覚には、
――正解とは言い難いが、間違ってもいないような気がする――
 と感じた。
「僕は、何もないところから新しくものを作ることが好きなんだ。たとえば工作だったり、作文だったりと、子供の頃はそういうものに熱中していたよ」
 と言っていた。
 それを聞いた時、
――なんて、新鮮な考えを持った人なのだろう?
 と感じたが、同時に、
――私にはマネのできないことだわ――
 と感じた。
 それは、否定から入る自分を、さらに否定してしまっている自分を感じたからで、まるで昔ギャグであった、
「反対の反対は賛成」
 という言葉を思い出させた。
 その時に感じたのが、自分の考え方が、減算法だということだった。
――否定から入るのが減算法。彼のように新しく生み出そうという発想は、何もないところから始まっているので、最初は必ず肯定から入るものなのだろう――
 と感じた。
 ということは彼は加算法ということになり、自分と正反対の性格であるとすれば、そこに至るのではないかと思った。
――私がネガティブ思考なら、彼はポジティブ思考なんだわ――
 だから自分が憧れるのは分かるのだが、一緒にいると、
――彼が私に憧れを感じているようにも思えるのよね――
 と感じるのだった。
 早苗はそんな真田に惹かれていった。彼が自分をどのように思っているかは分からなかったが、そんなことはどうでもよかった、自分が誰かを好きになったということが大切なのであり、今までの自分からは考えられないようなことだった。
 早苗は、自分で納得できないことは信じない性格で、信じられないことをそのまま放っておくのは嫌だった。そんな自分をやっと納得させてくれる相手が現れたことに、早苗は安心していた。
 あれはいつのことだっただろうか?
 まだお互いに付き合うという意識ではなく、友達という意識の方が強かった頃だったと思う、
 早苗は知らなかったが、その頃は早苗よりも真田の方が相手を強く意識している時期だった。真田も早苗のことを新鮮に考えていたし、一緒にいて楽しいと感じることのできる初めての相手だったのだ。
 相手が女性であるということで、一応の緊張はある。しかしその緊張が適度なカンフル剤になるのか、それまでの真田には考えられないような饒舌ぶりだった。
 早苗は真田の前ではあまり口を開かない。何を話していいのか分からないのだが、それは真田の方としても同じだった。
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次