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WHO ARE ROBOT?

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「過去の人がせっかく時代を作ってきているわけですよ。その人たちは、自分たちが作ってきた世界がどのようになるか、知ることなく死んでいくわけですよね。でも、その人たちには歴史を作ってきた実績がある。それを歴史というのは事実として継承していこうという学問なんですよね。受験科目として歴史というのは暗記物としての認識が大きいようですが、実際には現在や未来に対しての教訓となるはずなんですよ。それをしっかり勉強していくのはある意味、この時代を生きている自分たちの使命のような気がするのは僕だけなのかな?」
 と、真田は持論を展開させた。
「まさにその通りだと思いますよ。歴史の勉強は昔は女性にはあまり好まれなかったようですが、ある時期には、興味を持つようなプロパガンダ番組ができたりして、一時期、ブームになっていましたけど、結局、ブームで過ぎてしまったのは実に残念なことですね」
 早苗はここ数年の、
「歴女」
 と呼ばれるような人のことを話しているようだ。
――あれ? ブームってもうすたれてているんだろうか?
 と真田は感じたが、実際にはすたれたわけではなかった。
 なぜその時早苗がブームという表現をしたのか真田には分からなかったが。早苗には早苗の考えがあったようだ。早苗には歴女なる表現はあまり好きではなかった。歴史というのをブームという形で作り上げてしまうと、去ってしまってから再度盛り上げることが、今度はかなり難しさを増すものだと思っていたからだ。
「一度去ってしまったブームって、この間のことでもかなり前のように思えてしまうのがネックなんですよね」
 と言った早苗の言葉がすべてを語っているようだった。
 現在の三人の関係について考えてみると、早苗は真田に好かれていて、付き合うことになったが、千尋はそんな二人に嫉妬している。どちらかというと早苗に対して嫉妬しているのだが、そのことを千尋は自覚していない。
 こんな関係を一番よくわかっているのは早苗ではないだろうか。早苗は感が鋭いところもあり、そんな早苗は千尋の気持ちを知らないような素振りをしていることを、真田も千尋も分かっていなかった。
 千尋になら分かりそうな気がするのだが、実際に嫉妬してしまったことで感情が高ぶってしまったために、本当なら察するはずのことに気付くことはなかった。まさか自分が真田ではなく早苗に嫉妬しているなど信じられるわけもなく、ウスウス気付いているのかも知れないが、認めたくない自分を否定しようとして、何事にも否定から入ってしまう自分の性格に気付いていないのだ。
 早苗は千尋には強いが、真田には従順だった。自分が男性相手に従順なのは分かっていた。千尋と違って子供時代から親に対して余計な気を遣う必要などなかったことでおおらかに育ったことで、自分のまわりの人間に対して従順だということに気付いていた。
 従順であることが一番無難であることを分かっている。いわゆる、
――ネコをかぶっている――
 と言ってもいいだろう。
 自分でもネコをかぶっているのは分かっていた。テレビドラマなどでよく見るお嬢様に自分を当て嵌めて見ることが多いので、ドラマなどでは大げさにも見えてしまうネコをかぶった状態に、早苗は共感を阿多のだった。
 中学時代までは男性というのはまったく違った人種であり、自分に近づいてくることはないと思っていた。男子生徒が早苗を見る目は、高嶺の花であり、好きになっても成就するはずはないと最初からあきらめている人が多かった。
 中には無謀な男の子もいた。早苗を好きになってしまったことで、自分のことが分からなくなり、早苗を苛めてしまう人もいたが、まわりから浴びせられる白い眼が痛々しく感じられたが、そんな少年は、自分を悲劇の主人公のように感じていたようだ。一人孤立した状態は、彼の中の本当の気持ちに気付かせることになり、苛めてしまった自分への自戒の念を感じさせることになった。
 早苗はそんな時、彼が我に返っているかのように見えた。自分を苛めていた相手なのに、なぜか気になってしまうのは、
――私には異常性癖の気があるんじゃないか――
 と感じさせた。
 しかし、それが自分の中にある従順な気持ちから来ているものだということに悟ることができれば、悩むこともなかったはずである。
 苛められたいと感じたわけではなく、相手に対して従順でありたいという気持ちから、彼の望みを叶えてあげることが自分の喜びであるということを別の発想で感じてしまったのだろう。
 彼は、早苗が悩んでいる間に立ち直っていた。
 性格的にサバサバしたところがあり、どちらかというと熱しやすく冷めやすい性格なのではないかと思えた。
 早苗にも熱しやすく冷めやすいところがあるのは自分でも分かっていた。ただ世間知らずなところがあることで、人と関わることが怖いという思いがあったのだが、それをまわりの人に悟られたくないという思いが強くあった。そのことが人というものに依存してしまう体質であることに気付かなかったのだ。
 熱しやすく冷めやすい性格であるが、男性を好きになることはなかった。
 早苗は自分が男性を好きになる前に、相手に好かれるタイプであり、努力などしなくともまわりがチヤホヤしてくれることを、お嬢様としての資質のようなものだと思っていたのだ。
 自分がお嬢様であるということが嫌いではなかった。チヤホヤされるのは嫌ではなかったし、そのせいで他の人から嫉妬の目で見られることもそれほど気にすることではなかった。
――私って大雑把なところが魅力なんだわ――
 と感じていた。
 大雑把な性格は、細かいことでいちいち悩まないということだと思っていて、決して否定的な性格ではなかった。
 そんな早苗だから男性から好かれたのだろう。まわりの女性の嫉妬の目を浴びている早苗を見ながら、男性は彼女を悲劇のヒロインとして見ていた。さらに彼女のことを気になっている男性には、他の男性も同じような目で彼女を見ていることに気付いてくる。
 そうなると、普通であれば、
――他の連中に負けるものか――
 という気概を感じるものなのだろうが、早苗を好きになった連中にはそんな気概は感じられない。
――早苗さんが僕のことを好きになってくれればいいんだがな――
 と考える程度だった。
 早苗が熱しやすく冷めやすい性格であることで、まわりから見ると、八方美人にも見える。だから、彼女に対して必要以上に思い入れを感じてしまうと、辛いのは自分だけであった。
 早苗に振り回されることになることが分かっているので、彼女を好きになる男性は、彼女だけを見つめているというよりも、気になる女性の一人としてだけ見ているようだった。そんなまわりとの関係が形成されていく中で、早苗に特定の男性ができるはずもなかったのだ。
 だが、それは中学時代だけのことだった。
 成長期の男女の感覚が、うまく歯車が絡み合った感じで、それぞれに嫉妬のような苦虫を噛み潰すような感情が生まれることはなかった。それが早苗の中で、
――私は異常性癖がある――
 と思わせることにはなったが、男女間でのトラブルになることはなかった。
作品名:WHO ARE ROBOT? 作家名:森本晃次