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タイトルは終わってから考えます

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――――猛烈に頭が痛いのは、アルコールのせいだと分かっている。
でも分かっていることと対処できるかは別問題なので、ひたすらに自分の肝臓がアルコールを分解して無害化してくれるのを水を時々飲みながら待つしか手段方法は無い。
頭蓋全体を横向きに一周するようなガンガンとした痛み。
まったく、昨日の自分はどうかしていた。

「クソみたいな仕事はすぱっと辞めて、一緒にバンドをやりませんか」

と彼は言った。
「はい」とボクは応じた。
それこそ、思い返すだに顔から火が出そうなのだが、完全にボクはある種の熱に浮かされていたと考えるべきなのだろう。
だけど誓ってボクには同性愛のケはないし、彼にだってそうだと思う。
そういうくだらない意味ではないしもっとそれよりも深い――――奇妙何か、そう、たとえて言うならば縁(えにし)のような何かを本能的にボクは感じ取ったのだと思う。

彼のドラミングは確かに素晴らしい。
正直なところ、それまで聞いてきたあらゆるドラムの音を過去にしてしまった感すらある。
漠然と彼のドラムの音を思い返しながらベッドに腰掛けると、スプリングがきしむ「ぎし」という音がした。
右の手のひらを眺めながら、一度ゆっくりと握ってみた。
その手の中に入っている世界を想像してみた。
なぜだかあの時、確かにボクは、

この手の中に世界を握る感触を、確かに感じた。
王座に手をかけた。

何をバカな、と思いながら手を開く。
でも、その中にまだ空気は残っている。
確かにそれはそこにある。
見えなくとも、
気配は去らない。

――――世界に求められる気持ちとは、どんなモノだろう?

ふとそんなことをボクは夢想した。
それは多分ギターを手にした若者なら誰もが一度は考えることだ。
だけどそれは夜店のテキ屋が出すくじ引きで一等が当選するよりも希薄な可能性(そう、そもそも『それは入っていない』と考えるのが妥当なくらいだ)で、『あり得ない』という意味では頭上に隕石が直撃するのと大差ない。
しかし両者には決定的に異なる点がある。
それは――――自分の中に『それ』を呼び寄せる『萌芽』があるかどうかだ。
楽器を弾き、音楽をたしなむモノにならば、自分が奏でる音が世界のどこで鳴っているのか分かる瞬間がある。
自分が世界の中心にどこまで肉薄しているか、感じる瞬間が確かにある。
それは組みかけた総数の知れないパズルのピースのように、どこまで絵が広がるのかもも分からないまま、でもその束の間自分がその中心に至る地図を、コンパスを手に入れたかのような感触だ。
完全に他者にその運命を預けるのとは訳が違う。
自分自身の作為と業が影響してくるという意味では、むしろそれは運命ですら無い。

うう、と呻いて両のこめかみを右手で掴むように抑えた。
世界を、ボクの頭蓋を一周するような頭痛がもう一度ボクを責め立てる。
素に戻れ、思い返せとボクを『こちら側』へ引き戻そうとするかのように。

――――その時、ボクのスマホの画面が白く光った。
着信に対する反射でボクはそこへ視線を落とした。
だけどその行為に意味は無い。
だって、ボクは気がついていたから。
発信者が誰であるかなんて、もう、とっくのとっくに。