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生まれ変わりの真実

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 小学生の時だけの付き合いで、迫丸よりも付き合いとしては短かった。頭の中では友達だと思っているが、果たして本当に友達と言えたかどうか、少なくとも、晴子には友達という表現はふさわしくない。
 彼女に、本当に友達と言える人がいたであろうか? 近いと言えば、美由紀しかいなかったに違いない。だが、それも晴子から見ての主従関係に近いものがあった。少なくとも美由紀には、
「従っていた」
 という記憶しか残っていない。
 小学三年生の頃、初めて話をしたが、話の内容は、他の女の子にはないような感覚で、大人びていたというよりも、子供らしさのない話だったように思う。何か相手を従わせることにだけ発想が行っていて、他の人が話していれば、バカバカしいと思うようなことも、晴子が話せば、当然のごとくと思えるくらい、様になった話し方だった。
 今度の夢の主人公は、どうやら、この晴子のようだ。
 大人びていた晴子が、大人になった姿を想像すると、さほど変わりはなかったが、身体はグラマーにしか想像ができない。それでいて、どこかボーイッシュなところも感じるところから、ショートカットが最初にイメージできた。
 妖艶な雰囲気は、さらに深まり、美由紀が知っている、どんな女性よりも妖艶さを持った女性像が出来上がっていて、妖しさというよりも、艶っぽさの方が強かった。
 迫丸との夢の中で見せた自分が妖しさの方が強かった気がしたのに対し、艶っぽさが強い晴子は、ひょっとして、美由紀の中での一番強い女性像なのかも知れない。
――晴子になら、身体が反応するかも知れない――
 そんなことを思ってしまった自分に対し、羞恥を感じたが、夢の中だという意識があるからか、恥じらいをいつの間にか打ち消しているようだった。
 夢の中の晴子は、美由紀に対して最初から積極的だった。先ほどの夢の続きを思わせることで、美由紀には恥じらいはすでになかった。大胆とも言えるほどの気持ちが大きくなっていて、身体の反応は、準備万端であった。そのあとは、この先の展開で、どうにでもなるかのような美由紀の期待と、晴子の表情に、夢の中での美由紀は胸躍らせていたのだった。
 晴子にとって、美由紀を蹂躙することは、子供の頃から意識としてあったようだ。だが、美由紀本人には、晴子に蹂躙されているとは思っていない。むしろ守られているという意識の方が強かった。
 いわゆる洗脳されていたのかも知れない。被害に遭っている方が、都合よく考えられるというのは、洗脳されていると考えるのが、一番理屈に合った考え方に思える。被害という言葉は大げさであるが、子供社会の中では、意外と横行していることなのかも知れない。何が正しく、何が間違えているのかという確固たる考えもない中で、一番相手を洗脳できるのが、この頃なのかも知れない。
 洗脳する方も無意識だ。相手の心を支配してやろうなどという大それたことまで考えていないのではないか。無意識だからこそ、大人が考えても大胆に思える発想が、子供の中に生まれてくるのだと考えると、ゾッとする美由紀だった。
 大人になった晴子を、自分の中で想像してみたことがあった。それもごく最近だったように思う。道ですれ違った女性を、大人になった晴子だと思って、ビックリして思わず途中まで追いかけたことがあった。それほどまでに、晴子に対して美由紀の中で、意識があったのだ。
 最近までは確かに忘れていた存在だった。何かをきっかけに晴子を思い出したのだとすれば、それは、やはり似た人を見たからではないだろうか。それも今から思えば、ただの偶然だったとは思えない。出会うべくして、出会ったのだ。
「交差点というのは、人が出会ったり別れたりするところだ」
 と、言っていた人がいて、漠然としてしか聞いていなかったが、今から思えば、その言葉が頭から離れなかったことも、晴子のことが今頃になって意識させられる一因になってしまったのではないかと思えた。
 夢の中に出てきた晴子は、二十歳前後の女性に見えた。クリっとした目は、可愛らしさを含んでいる。そして、その笑顔には小悪魔的な表情が浮かんでいて、笑顔とは程遠さを感じさせた。
 夢の中の自分は、今度は今の自分である。迫丸相手の自分とは明らかに違っていた。同じ自分であっても、その時の年代が違えば、まったく違った人間として見ているのかも知れない。
 迫丸が相手の時は、完全にもう一人の自分のイメージだった。だが、晴子が相手の自分は、今の自分であり、夢の主人公として、今度は自分が主導権を握れるものだと思っていた。
「晴子さん、お久しぶり」
 声を掛けた美由紀は、明らかに上から目線だったが、晴子はそんな美由紀に対して、挑戦的な態度は取らなかった。それどころか、下手に出ている態度は、今までの晴子にはなかったもので、美由紀は、これが夢であることの本当の意味なのだと感じ、ホッとした気分になっていた。
「お久しぶりです」
 声のトーンも、かなり高めで、
――この子、こんな高い声が出せるんだ――
 と、感じたほどだった。そこに美由紀の油断があったことも事実だが、それも致し方ない。何しろ、晴子に対しては、
――何を考えているか分からない――
 というイメージを強く持っていたのだからだった。
「どうしたんですか?」
 一瞬、ボーっとしてしまっていたようで、ふいに声を掛けられ、ビックリした。思ったよりも、晴子は相手を観察しているようだった。だが、そのこともその時は別に気にならなかった。なぜなら、晴子は自分よりも年が若く、そして、下手に出ている彼女の姿、今までに見たことがなかったからである。別人でもないのに、ここまで変わってしまうのは、改心があったとしか、美由紀には思えなかったからだ。
 ここまでは、夢だと思いながらも、イメージは現実社会のイメージが濃かった。普通に出会って、普通の会話。逆に夢だと思いながらも、普通の会話ができることを不思議に思ったくらいだった。
 晴子の目が大きく、クリっとしているのが小さな頃と変わっていなかったことが、美由紀にとって晴子を感じる中で一番の誤算だったのかも知れない。
 一番特徴があって、その人を表している表情。それは、相手を見つめる時の瞳の輝きだった。
 子供の頃には、そこまで感じられなかった。今ではその目で見つめられたことで、ドキッとなるほどであった。それは、美由紀自身が、大人になってきた証拠であり、淫靡さを自覚してしまった今だからこそ感じることなのだ。
――ということは、迫丸の夢を見たから、その影響で、晴子の夢を見たのかも知れない――
 晴子の夢が、まるで迫丸との夢と繋がっているという感覚だ。
 自分が淫乱だという自覚が、どこまで美由紀の中にあるのか分からない。自覚していると思っているが、自覚ではなく、妄想に近いものなのかも知れない。妄想だとすると、夢の中で暗躍する晴子は、美由紀の思いによってかなり着色されている可能性もあるということだ。
 自分が淫乱だという意識を持っている美由紀は、今度は自分が責めてみようという思いが頭を過ぎった。
作品名:生まれ変わりの真実 作家名:森本晃次