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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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赤い色が鮮やかだ。なんて美しい着物だろう。颯馬はぼんやりと思う。
長い長い坂道を、その行列は下っていく。袴を着た大人たちの行列。その中央、輿に乗せられた少女が見える。真っ赤な晴れ着に身を包み、項垂れたその横顔はひどく静かで穏やかに見えた。行列を成す大人たちは、みな一様に暗い顔をしている。晴れ着を着ている少女の門出…それなのに誰一人、祝福に満ちた顔をしていないのだった。

「ねー、どこに行くの?」

颯馬は、輿の横を歩きながら少女に問うた。

「お嫁にいくの」

少女の声は、なんの感情も込められてはいなかった。

「神様のところに、お嫁にいくの」

その言葉を聞いて、颯馬は理解した。そうか、この子は…。

「そんな顔をしないで。わたしは、悲しくはないのだから」
「なぜ…?」
「これでみんな、幸せになれるから」



………



目が覚めた。ひんやりとした冬の夜。夜明けはまだ遠く、部屋の中は真っ暗だった。颯馬は全身に汗をかいていた。起き上がって息を吐く。

(うあ、珍し…)

颯馬は滅多にというか、殆ど夢をみないたちだった。みるときは、それなりに理由があるときだけ。それは神の啓示を受けるとき。天狗の意思が働く時のみだ。
前回は、瑞の夢をみた。月を映す鏡の池で、殺された青年の夢。あれはいま思えば、天狗の導きだったと思う。ということはいまの夢も?

(晴れ着を着て、お嫁に行った女の子…)

それが、今回の騒動と何か関係があるのだと思う。